頼清徳総統、抗日戦争勝利記念パレードで中国の強権的指導体制と「ファシズム」を批判

台湾の頼清徳総統は3日、中国の習近平国家主席がロシアや北朝鮮の首脳を迎え、抗日戦争勝利80年を記念する大規模軍事パレードを開催する中、中国の強権的な指導者崇拝や秘密警察ネットワークを公然と批判しました。この発言は、中国が主張する抗日戦争の歴史認識に対し、台湾からの明確な異議申し立てと見られています。台湾当局は、中国がこの戦争について歴史を歪曲していると繰り返し非難しています。

頼清徳台湾総統、中国の抗日戦争勝利記念パレードを背景に強権的体制を非難頼清徳台湾総統、中国の抗日戦争勝利記念パレードを背景に強権的体制を非難

台湾が主張する「抗日戦争」の歴史認識

頼総統は、抗日戦争勝利を記念する台湾の「軍人節」に際し、自身のフェイスブックに投稿しました。その中で、当時の政府であった中華民国の徐永昌将軍が中国を代表して日本の降伏文書に署名したという歴史的事実を指摘。さらに、かつて枢軸国であった全ての国々が現在では民主主義国家となっていることは「喜ばしい」と述べ、民主主義の価値を強調しました。これは、共産党政権が「中国の抗日戦争」としてプロパガンダ的に利用する歴史とは異なる、台湾の歴史認識を強くアピールするものです。

頼総統によるファシズムの定義と中国への示唆

頼総統は、中国の軍事パレードに直接言及することは避けつつも、「ファシズムの定義は幅広い」と述べ、その特徴について詳述しました。彼によると、ファシズムとは「極端なナショナリズム、幻想的な大国復興の追求、国内の厳しい言論統制、社会的多様性の抑圧、秘密警察ネットワーク確立、そして強権的指導者を中心としたあからさまな崇拝」を包含する概念です。これらの指摘は、現在の中国の統治体制を暗示するものであり、世界は平和と戦争の選択を迫られているという警告を伴っていました。特に、パレードで習主席がロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に囲まれていた状況は、国際社会における権威主義的な連携への懸念を浮き彫りにしています。

中国のパレードへの対応と台湾内部の動き

台湾当局は、国民に対し中国で開催される軍事パレードへの参加を自粛するよう呼びかけていました。しかし、台湾最大の野党である国民党の洪秀柱元首席は、この呼びかけにもかかわらず中国のパレードに出席し、台湾内部における中国との歴史認識や関係性に対する異なる見解が改めて示される形となりました。

結論

頼清徳総統の発言は、抗日戦争勝利80年という節目において、中国の歴史認識と強権的な統治体制に対する台湾の明確な批判と警鐘を国際社会に発するものです。台湾が民主主義の価値を堅持し、権威主義的傾向を持つ中国との間で歴史認識や政治体制の相違を明確にすることで、国際的な関心と議論がさらに高まることが予想されます。

参考文献