日本の機能性ウェア市場を牽引するワークマンが、この度、未曽有の気候変動に適応する新たな高機能ウェア「XShelter断熱ウェア」を発表しました。毎時130ミリメートルという猛烈な豪雨下でのテストでは、気象庁が「猛烈な雨」と定義するレベルをはるかに超える雨量を体験しながらも、ワークマンのウェアは水をほとんど通さず、衣服内の蒸れを感じさせない驚異的な性能を発揮。普段着と変わらない軽快さを保ちつつ、極端な気象条件下でも快適さを維持できる「着る断熱材」が、私たちの生活をどのように変えるのか、その詳細を探ります。
「着る断熱材」XShelterを着用し、毎時130mmの豪雨を体験するワークマンのモデル。
「WORKMAN EXPO 2025秋冬」で発表された新機軸
2025年秋冬コレクションとして、9月1日に東京国際フォーラムで開催された「WORKMAN EXPO」。約5000平方メートルに及ぶ広大な会場では、医療機器として認定されたリカバリーウェア「MEDIHEAL」や、今回の主役である「着る断熱材」を冠する新素材「XShelter断熱ウェア」など、ワークマンの新たな事業展開が紹介されました。特にXShelterシリーズは、近年頻発する異常気象への適応を前面に掲げた製品群として注目を集めています。ワークマンは、これらの衣服を単なるファッションとしてではなく、「気候変動に適応するための防具」と位置づけることで、現代社会のニーズに応える姿勢を明確にしています。
XShelterの核心:外部遮断と内部快適性の両立
XShelterの設計思想は、外部環境を徹底的に遮断しながらも、衣服内の快適性を高度に保つことにあります。この画期的なコンセプトを実証するため、80℃に熱したホットプレートの上にXShelterと一般的な衣料素材をそれぞれ置き、その上に氷を載せる実験が行われました。結果は一目瞭然で、一般的な衣料素材上の氷が瞬く間に溶けたのに対し、XShelter上の氷は一定時間溶けずに留まり、その優れた断熱性能が証明されました。
2種類の断熱素材「α」と「β」の技術革新
XShelterには、「断熱α」と「断熱β」という2種類の革新的な断熱素材が用いられています。「断熱α」は、空気のような軽さとカサ高感が特徴で、綿と組み合わせることで極めて高い保温性を実現。これにより、軽量でありながらも優れた防寒性能を発揮します。一方の「断熱β」は、宇宙服の技術を応用して開発された断熱シートであり、高い伸縮性を備えている点が特徴です。綿を使用せずともマイナス10℃程度の低温に対応できる性能を持ち、外気温が39℃の猛暑日でも衣服内を約30℃に保つことが可能です。この技術により、単一のウェアで防寒着や冷感ウェアといった単機能にとどまらず、幅広い気候条件に柔軟に対応できる多機能性を実現しています。
驚異の防水性と透湿性:蒸れずに豪雨を防ぐ
XShelterのもう一つの大きな特長は、これまで相反する性能とされてきた防水性と透湿性を、極めて高い水準で両立させている点です。その耐水圧は驚異の3万ミリメートルに達し、これは一般的な豪雨であっても水が内部に浸透しないレベルを確保します。同時に、透湿度は9万グラム/平方メートル時とされており、これは一般的な登山用高機能素材が5000〜6000グラム程度であることを考慮すると、桁違いの性能と言えます。衣服内の水蒸気を効率的に外部へ逃がすことで、汗による蒸れを極限まで抑制し、着用者に常に快適な状態を提供します。
つまり、XShelterは「豪雨を防ぐ」「汗による蒸れを抑える」「動きやすい」という三つの条件を同時に満たすことを可能にしました。これは、通勤や屋外での作業を完全に避けることが難しい現代社会において、極めて実用的な気候変動への適応策となり得ます。
まとめ
ワークマンが発表した「XShelter断熱ウェア」は、単なる衣料品の枠を超え、気候変動がもたらす極端な環境変化から私たちを守る「防具」としての役割を担います。優れた断熱性、驚異的な防水性と透湿性を兼ね備えたこの高機能ウェアは、現代のライフスタイルにおいて、悪天候下での通勤や屋外活動を強いられる人々にとって、非常に価値のある選択肢となるでしょう。XShelterは、これからの「気候変動時代」における快適性と安全性を再定義する、ワークマンの革新的な提案と言えます。
参考文献
- 東洋経済オンライン: 「着る断熱材」ワークマンが豪雨対策に本気の理由