今、日本の若者層であるZ世代の間で、熱狂的なファンを持つ「ラーメン二郎」や「二郎系ラーメン」に対して「怖い」という認識が広がっていることをご存じでしょうか。一方で、その独特の味わいと存在感への関心は高く、「行ってみたいけれど、足がすくむ」というジレンマを抱える若者も少なくありません。こうした背景から、実際に店舗を訪れることなく、その世界観や味をカジュアルに楽しめる新たなサービスや商品が次々と登場し、話題を呼んでいます。
「恐怖の館」化した二郎系ラーメン? Z世代が抱く不安の背景
かつて慶應大学出身の筆者にとって、「ラーメン二郎」の本店は三田キャンパスのすぐ隣に位置し、多くの学生が時間を問わず行列に並ぶ日常風景でした。順番が回ってきた際の喜びや、後ろに並ぶ人々への優越感は、卒業生にとって忘れられない思い出の一ページでしょう。当時、「怖い」という感情を抱くことは一度もありませんでした。
しかし現在、TikTokなどのSNSでは、二郎系ラーメン店で店員が若者に𠮟責する様子や、食べ残しに対して罰金制度が科される場面を収めた動画が多数投稿されています。これにより、店舗ごとの接客や注文方法が多様であるにもかかわらず、多くのZ世代が「本当は行ってみたいのに、雰囲気が怖くて行けない」と感じるようになっています。
具体的には、麺の量や味の濃さ、トッピングなどを指定する「コール」と呼ばれる独特の注文形式、「カラメ(味濃いめ)」「ニンニク増し」「ヤサイ増し」といった専門用語、常連客の文化に根ざした無言のプレッシャー、提供タイミングを合わせる「ロット制」、行列中の立ち振る舞い、そして何より「完食必須」とされる空気感など、店舗特有のルールや雰囲気がZ世代の訪問をためらわせる大きな要因となっています。
Z世代が「怖い」と感じるラーメン二郎を自宅で再現する「鍋二郎」や、パンと融合した「郎パン」のイメージ写真。カジュアルに楽しめる二郎系ラーメンの代替体験が人気を集めている様子を表す。
SNSが火付け役!「二郎系=逆に映える」新概念とカジュアルな体験
このような「行ってみたいが行けない」というZ世代の心境に応える形で、近年では「二郎系の味と雰囲気」をカジュアルに楽しめる商品や体験が急増しています。その火付け役となったのは、SNSを中心に活動するインフルエンサーたちの存在です。
特に注目を集めているのは、=LOVEの大谷映美里さんや美容系YouTuberのRちゃんなど、これまで二郎系ラーメンとは縁遠いと思われていた「爆美女インフルエンサー」たちによる大食い動画です。可愛らしい見た目とは裏腹に、豪快に二郎系ラーメンを食べ進めるギャップが「バズり」を呼び、「二郎系ラーメン=逆に映える」という新たな概念を社会に広めています。
こうしたSNSでの人気を背景に、自宅で簡単に二郎系の雰囲気を味わえる「鍋二郎ピクニック」のようなテイクアウト形式のサービスや、ラーメン二郎の要素をパンと融合させた「郎パン」など、ユニークな商品が多数登場しています。これらは、従来の二郎系のハードルを感じることなく、気軽にその魅力を体験したいZ世代のニーズを見事に捉え、新たな市場を形成しています。
結論
「ラーメン二郎」がZ世代にとって「怖い」と感じられる一方で、その独特の魅力への関心は依然として高いことが明らかになりました。SNSのトレンドやインフルエンサーの影響力により、「二郎系=逆に映える」という新たな価値観が生まれ、結果として店舗に足を運ばなくてもその世界観を体験できるカジュアルな商品やサービスが急増しています。これは、伝統的な食文化が現代の若者文化と融合し、多様な形で進化していく日本の社会トレンドを象徴する現象と言えるでしょう。
参考資料
- Z世代が「ラーメン二郎」を”怖い”と感じる理由と、新たな体験トレンド (Yahoo!ニュース/東洋経済オンライン)