ソウル物流会社で同僚の配送車タイヤを切り裂く事件、「無視された」動機に被害者深い不安

【ソウル発】韓国ソウル市内の物流会社で、30代の男性配達員が同僚の配送車のタイヤを刃物で切り裂くという衝撃的な事件が発生しました。動機は「自分を無視したから」という極めて身勝手なもので、被害に遭った配達員は現在、深刻な精神的不安を訴えています。この同僚トラブルは、職場の人間関係の複雑さと潜在的な危険性を示唆しており、社会に大きな波紋を広げています。

事件の詳細と発覚

JTBC「事件班長」の報道によると、事件は8月7日に発生しました。被害者の配達員が同僚と荷物の整理をしていた最中に「パン」という破裂音を聞き、自身の車を確認したところ、助手席側の前輪タイヤが完全に潰れているのを発見しました。タイヤには鋭利な刃物で削られたとみられる跡が7カ所も残されており、明らかな意図的な破損であることが示されました。保険会社の職員も「意図的な破損であり、ほとんど殺人未遂に近い」と述べ、警察への通報を強く助言しました。

監視カメラが捉えた犯行の瞬間

会社の防犯カメラ映像を分析した結果、隣で作業していた同僚の男性が車の陰に身を潜め、周囲を何度も見回しながら被害車両の前輪を繰り返し刺す姿が鮮明に映っていました。犯行後、加害者は一度自分の車に戻ったものの、再びタイヤの様子を確認してからその場を立ち去っており、周到かつ計画的な犯行であったことが伺えます。

ソウル物流会社でのタイヤ切り裂き事件を報じるJTBC「事件班長」の映像ソウル物流会社でのタイヤ切り裂き事件を報じるJTBC「事件班長」の映像

加害者と被害者の関係性、そして動機

被害者は、加害者との関係について「勤務1年で隣同士になったのは初めてで、特に親しい関係ではなかった」と語っています。しかし、約6カ月前に発生した高価な貴金属の配送をめぐるトラブルの際、加害者がその件に関与を認めていた経緯があり、被害者は「そのトラブルで恨みを持たれていたのではないか」と推測しています。当初、被害者は加害者からの謝罪を期待しましたが、加害者は「自分はやっていない。防犯カメラを確認すればいい」としらを切り続けました。最終的に警察の取り調べに対し、加害者は「無視されたことへの腹いせだった」と犯行を認め、特別財物損壊容疑で検察に送検されました。

職場に潜む不安と被害者の決断

加害者は現在も被害者と同じ職場で勤務を続けていますが、謝罪は一切ありません。被害者は幸いにも勤務時間がずれているものの、「再び危害を加えられるのではないかという不安で仕方ない」と胸中を明かしました。この不安から、被害者は今月での退職を決意しており、精神的な負担の大きさが浮き彫りになっています。職場内での人間関係のもつれが、個人のキャリアだけでなく、心身の健康にまで深刻な影響を及ぼす実態が改めて示されました。

まとめ

このソウルの物流会社で発生したタイヤ切り裂き事件は、「無視された」という個人的な感情が深刻な器物損壊事件に発展した事例です。職場における人間関係のトラブルが、当事者だけでなく周囲にも不安を与える結果となりました。社内でのコミュニケーションの改善や、従業員の心理的安全性を確保するための対策が、今後ますます重要となるでしょう。

参考文献

(c)KOREA WAVE/AFPBB News, JTBC「事件班長」