習近平・プーチン「長寿発言」映像削除の波紋:CCTVが「事実歪曲」主張、長期政権の思惑か

中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領による「今世紀中に150歳まで生きられる」との会話を含む映像が、ロイター通信によって削除されたことが明らかになった。この映像は中国国営の中国中央テレビ(CCTV)から提供されたものだが、CCTVが「映像が編集された結果、事実が歪められた」として削除を要求。この動きは、両国指導者の「長寿」に関する発言と、その背景にある長期政権への思惑を巡り、国際的な関心を集めている。

「今世紀中に150歳」発言の経緯と削除要求

問題の映像は、2025年9月3日に北京で開催された「抗日戦争勝利80年」の記念行事の際に撮影されたものだ。行事開始前、習近平国家主席は「今世紀中に150歳まで生きられるようになるだろう」と述べ、これに対しプーチン大統領は「不死さえも実現できる」と応じる様子が音声で記録されていた。この会話を捉えたCCTVの映像は、ロイター通信によって約4分間に編集され、1000社以上の契約社に配信された。

しかし、CCTVは5日、ロイター通信に対し映像の削除を要求し、使用許諾も取り消した。CCTV側は「映像が編集された結果、事実が歪められた」と主張している。これを受け、ロイター通信は映像を削除し、契約社にも削除を要請したものの、「報道した内容は正確だと確信している」との見解を示している。この突然の削除要求は、発言の真偽やその政治的意味合いについて憶測を呼んだ。

2025年9月3日、北京での抗日戦争勝利80年記念行事にて、雑談を交わす習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩総書記2025年9月3日、北京での抗日戦争勝利80年記念行事にて、雑談を交わす習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩総書記

ロシア大統領府が認めた会話内容と背景

ロシア大統領府は、プーチン大統領が3日の行事後に記者団の質問に応じた際、この「長寿談議」の内容を認めたと発表している。記者から「人類は本当に150歳まで生きられると思うか」と問われたプーチン大統領は、「(習)主席がそれについて言及した。(イタリア元首相の)ベルルスコーニ氏もこの問題に熱心に取り組んでいた」と述べた。さらに、「最新の医療手段や、臓器移植を含む技術によって、活動的な生活を長く送れる希望が出ている」と付け加え、科学技術の進歩が長寿を実現する可能性に言及した。この発言は、両指導者の間で実際に長寿に関する会話が交わされたことを明確に裏付けるものとなった。

長期政権への思惑:憲法改正との関連

今回の「長寿談議」は、習近平国家主席とプーチン大統領がそれぞれ長期政権を確立している背景と無縁ではないとの観測も一部で出ている。習主席は2013年に国家主席に就任し、現在3期目を務めている。中国の憲法がかつて国家主席の任期を2期10年までと定めていたにもかかわらず、2018年の憲法改正でこの任期制限を撤廃したことで、習主席は事実上、終身での政権維持が可能となった。

同様に、プーチン大統領も2020年の憲法改正によって、これまでの任期を「リセット」し、最長で36年まで大統領を続けられる道を切り開いた。両指導者が憲法を改正してまで権力維持を図っている現状において、冗談めいた「長寿」の話題であっても、その発言は単なる雑談以上の政治的意味合いを持つと解釈される可能性がある。この会話が、彼らの権力構造と今後の国際情勢にどのような影響を与えるか、引き続き注目される。

結論

習近平国家主席とプーチン大統領の「長寿発言」を巡る映像削除騒動は、単なる情報操作の問題に留まらず、両国の情報統制、そして両指導者の長期政権への思惑を浮き彫りにした。CCTVによる削除要求と、それに対するロイター通信の「報道内容の正確性」の主張は、情報の透明性と信頼性に関する国際的な課題を改めて提示している。また、ロシア大統領府が会話内容を認めたことは、発言そのものの事実を確定させると同時に、その背後にある政治的文脈への関心を一層高めた。この一件は、国際政治における情報伝達とリーダーシップのあり方について、多角的な視点から考察する機会を提供するものである。


参考文献

  • ロイター通信 (Reuters)
  • 中国中央テレビ (CCTV)
  • ロシア大統領府 (Kremlin.ru)
  • 毎日新聞 (Mainichi Shimbun) – 2025年9月5日付
  • スプートニク通信AP (Sputnik News AP)