2025年8月18日、ノルウェー検察が発表した衝撃的な声明は、世界中の王室ファンに深い衝撃を与えました。メッテ=マリット皇太子妃の長男、マリウス・ボルグ・ホイビー氏が、レイプを含む計32件もの罪で正式に起訴されたのです。有罪となれば、最長10年の懲役刑が科される可能性があり、この前代未聞のノルウェー王室スキャンダルは、国民の王室への信頼を大きく揺るがし、支持率が急落。現在では「王室の廃止」を求める声すら上がる事態となっています。深い悲しみと怒りを感じるノルウェー国民の間で何が起きているのか、20年以上にわたり王室を取材してきた現地記者への取材を基に、その背景と影響を詳細に分析します。
ノルウェー社会の「希望」としてメディアに愛された幼少期
マリウス・ボルグ・ホイビー氏は、1997年1月、メッテ=マリット皇太子妃が当時の交際相手との間に設けた長男として誕生しました。王位継承権は持たないものの、2001年に母親がホーコン皇太子と結婚したことで、彼は一躍「王室の子ども」として世間の注目を集めることになります。幼少期のマリウス氏は、金髪に澄んだ青い瞳を持つ愛らしい姿で、王室行事に登場するたびにメディアがこぞって取り上げました。
ノルウェー国営放送NRKの王室記者クリスティ・マリー・スクレーデ氏は、当時の様子を次のように語ります。「彼は美しく可愛らしい少年でした。皇太子が誰とでも結婚できる、近代的な君主制国家であるノルウェーにおいて、彼の母親の選択はまさにその象徴でした。つまり、マリウス氏の存在は、不可能だったことが突然可能になった『現代社会の象徴』だったのです」。新聞の見出しには「リトル・マリウス」という呼び名が頻繁に登場し、特集が組まれることもありました。ノルウェー国民は、彼の成長を自分たちの子どもと重ね合わせ、温かい眼差しで見守っていたと言えるでしょう。
幼少期のマリウス・ボルグ・ホイビー氏とメッテ=マリット皇太子妃。ノルウェー王室の近代化を象徴する姿として国民に愛された「リトル・マリウス」時代。
「民間人」としての葛藤と、転落への序章
しかし、マリウス氏の立場は常に複雑でした。王室の公的役割も王位継承権も持たない一方で、母親が皇太子妃であるため、常にメディアの注目を浴び続ける運命にありました。彼は年を重ねるにつれ、「自分は王子ではない」という現実と、世間からの期待とのギャップに苦しむようになったと言われています。
2017年、20歳になったマリウス氏は「民間人として生きたい」という意思を表明し、公の場から退きました。王室のしがらみから解放され、自身の道を歩もうとする若者の姿に、当時のノルウェー国民の中には共感を覚える人も少なくありませんでした。しかし、その後は自由な生き方の裏で、派手な交友関係や薬物関連の報道が目立つようになります。それでも当時は、彼がこれほど重大な犯罪の容疑者、そして被告人になるとは誰も想像していませんでした。
転機となったのは2024年8月です。マリウス氏は元交際相手に対する暴行容疑で逮捕されました。その後の捜査で、違法な盗撮などの新たな疑惑も浮上し、今回の大量起訴へと至ったのです。「リトル・マリウスはもういないのか…」。幼い頃の愛らしい姿を知る国民の多くは、この現実に深い衝撃と落胆を覚えています。
ノルウェー王室の信頼回復に向けた課題と国民の期待
マリウス・ボルグ・ホイビー氏に対する起訴は、ノルウェー王室にとって前例のない危機をもたらしています。国民の間では、王室の存在意義や将来について、厳しい議論が交わされるようになりました。長年培われてきたノルウェー王室の信頼と支持は大きく損なわれ、一部では君主制の廃止を求める声も上がり始めています。この事件は、単なる一王族の問題に留まらず、ノルウェー社会が抱える現代的な課題、そして国民と王室の関係性を浮き彫りにしています。王室がどのようにこの困難を乗り越え、国民の信頼を回復していくのか、その動向が世界中から注目されています。
参考文献
- FNNプライムオンライン, 「ノルウェー皇太子妃長男がレイプ含む32件で起訴『王室廃止』の声も…現地記者が語る国民が絶望する“リトル・マリウス”の転落」, Yahoo!ニュース, 2025年8月18日. (https://news.yahoo.co.jp/articles/82d75000eb884aed49b9b6a41f282504782344d6)