アメリカの下院監視委員会は9月8日、ドナルド・トランプ前大統領がかつて性的搾取の容疑で起訴された故ジェフリー・エプスタイン元被告に2003年に送ったとされる「バースデーブック」を入手し、その画像を公開したと発表しました。この文書には、両者の親密な関係を伺わせる「わいせつ」なメッセージが含まれているとされ、トランプ氏がその存在を否定してきた中で、新たな政治スキャンダルへと発展する可能性があります。
1997年、フロリダ州マール・ア・ラーゴの邸宅で親交を深めていたドナルド・トランプ氏とジェフリー・エプスタイン元被告。過去の交流を示す貴重な一枚
下院委員会による「バースデーブック」公開とその内容
下院監視委員会の民主党議員団が公開した文書は、女性の体の輪郭が描かれたカードに、トランプ氏とエプスタイン元被告が対話形式でメッセージを交わすように記されています。メッセージにはトランプ氏が「我々には共通点がある」と語る部分があり、結びには「誕生日おめでとう——これからも毎日が素晴らしい秘密とともにありますように」と書かれています。ウォールストリートジャーナルが今年7月に最初にこのバースデーカードの存在を報じた際、同紙はメッセージが「わいせつ」であり、「陰毛を模した」とされる署名が含まれていたと伝え、大きな波紋を呼びました。
トランプ氏の猛反論と巨額訴訟
ウォールストリートジャーナルの報道に対し、トランプ氏は強く反論し、「私は人生で一度も絵を描いたことがない。女性の絵など描かない」と主張しました。彼は同紙に対し、少なくとも100億ドル(約1兆4700億円)の損害賠償を求める訴訟を提起しています。しかし、トランプ氏が過去にスケッチを描き、それがオークションで取引された事例が複数存在する事実は広く知られています。ロバート・ガルシア下院監視委員会の民主党委員長は9月8日の声明で、「監視委員会は、大統領が存在しないと言っていた悪名高い『バースデーブック』を入手した」と述べ、トランプ氏に対し「自身が知っている真実を語り、エプスタイン関連のすべてのファイルを公開すべき時だ。アメリカ国民は説明を求めている」と訴えかけました。
ホワイトハウスの「偽物」主張と署名の真偽論争
一方、ホワイトハウスは、下院監視委員会が公開した文書を「偽物である」と断じています。テイラー・ブドウィッチ副首席補佐官は自身のX(旧Twitter)アカウントに、トランプ氏の近年の公文書での署名画像を投稿し、「これは彼の署名ではない。名誉毀損だ!」と投稿しました。ブドウィッチ氏は、公開された署名がトランプ氏の公文書の署名とは一致しないと主張していますが、過去にトランプ氏が使用していたファーストネームのみの署名とは類似点が見られるとの指摘もあります。また、キャロライン・レヴィット報道官もXに「トランプ大統領がこの絵を描いておらず、署名していないことは明らか」と投稿し、トランプ氏の弁護団が訴訟を積極的に進める意向を示しましたが、絵を描いていないと断定できる具体的な理由については言及していません。
この「バースデーブック」を巡る論争は、トランプ氏と故エプスタイン元被告との関係に対する疑惑を再燃させ、下院委員会とホワイトハウスの間で激しい応酬が続いています。文書の真偽と内容の解釈が、今後の政治的な展開に大きな影響を与えることになりそうです。