人気ラーメンチェーン「天下一品」(本社:滋賀県大津市)は、京都市内のフランチャイズ店舗で提供したラーメンに異物が混入していたことを認め、謝罪した。この問題を受け、問題発生店舗を含む2店舗の営業を一時停止する措置が取られた。消費者の食の安全に対する関心が高まる中、このような事態が発生した際の金銭的補償の可能性について、櫻井俊宏弁護士に話を聞いた。
京都の天下一品 新京極三条店。ラーメンへの異物混入が発覚し、営業停止措置が取られた問題の店舗外観。
天下一品 新京極三条店での異物混入と会社の対応
報道によると、問題は京都市中京区にある「天下一品 新京極三条店」で発生した。20代の女性客が注文した「こってりラーメン」の中に、ゴキブリの死骸1匹が混入していたという。女性はラーメンを口にした後に異物に気づいたとされている。
この事態を受け、天下一品を運営する天一食品商事は、混入が発生した新京極三条店に加え、系列の河原町三条店の営業を停止した。同社は公式リリースで「当該商品をお召し上がりになられたお客様には、多大なるご不快とご迷惑をおかけしましたこと、心より深くお詫び申し上げます」と謝罪。再発防止策として、両店舗での徹底した害虫駆除、全店舗を対象とした衛生管理の強化、従業員への指導徹底などを実施したことを明らかにした。女性客には店側から返金が提案されたものの、女性側がこれを辞退したと報じられている。
異物混入時の金銭的補償の可能性と慰謝料
飲食店の提供する商品に異物が混入していた場合、客はどのような金銭的補償を求めることができるのだろうか。櫻井俊宏弁護士は、特に今回のようにゴキブリがラーメンに混入していたケースについて、「ゴキブリが入ったラーメンを食べた場合には精神的損害が認められると考えられます」と指摘する。
櫻井弁護士によると、ゴキブリ入りラーメンを食べさせられたことによる「不法行為に基づく慰謝料」の請求が可能となるという。報道では女性客が返金を断ったとされているが、その金額では納得できないと感じた可能性も考えられる。
実際に慰謝料を求めた場合、これまでの裁判例に照らすと、「数万円程度の場合が多い」とのことだ。さらに、もし異物混入によって体調を崩し、治療が必要になった場合には「治療費」を、仕事に行けなくなった場合には「休業補償」も請求できるケースがあるという。しかし、裁判となった際には、「ゴキブリが入っていたことと体調不良との関わりがあるとする因果関係の立証は、容易なものではありません」と、その難しさも示唆した。食の安全に関わるトラブルは、精神的な苦痛だけでなく、具体的な損害に発展する可能性もあるため、冷静かつ適切な対応が求められる。
結論
今回の天下一品での異物混入問題は、飲食業界における衛生管理の重要性を改めて浮き彫りにした。消費者は、異物混入という不測の事態に遭遇した場合、精神的損害に対する慰謝料や、体調不良が引き起こされた場合の治療費・休業補償を請求する権利がある。しかし、その因果関係の立証には専門的な知識が必要となる場合もあるため、弁護士などの専門家への相談が解決への鍵となるだろう。企業側には、消費者が安心して食事を楽しめるよう、一層の衛生管理と再発防止策の徹底が強く求められる。
取材協力弁護士
櫻井 俊宏(さくらい・としひろ)弁護士
企業法務・交通事故・相続・離婚問題等を得意としている千代田区・青梅市の弁護士法人アズバーズ代表弁護士。中央大学の法律顧問(法実務カウンセル)を担当している。応援団出身であり現在監督。「弁護士 ラーメン」と検索すると自身のラーメンブログが一番上に出てくる程のラーメン通。
事務所名:弁護士法人アズバーズ
事務所URL:http://as-birds.com