高市早苗首相(自民党総裁)と国民民主党の玉木雄一郎代表は18日に党首会談を行い、課税最低限を178万円に引き上げる「年収の壁」をめぐる合意を交わしました。この合意書には、国民民主党が2026年度予算案の早期成立に賛成することが明記されており、政治の安定に向けた重要な一歩と見られています。与党の補完勢力と見なされることの多い野党による予算賛成は異例であり、両党の関係性、特に「ASライン」と呼ばれるホットラインが注目されています。
「年収の壁」合意の背景と玉木代表の喜び
国民民主党が長年実現を求めてきた政策の一つである「年収の壁」の突破は、玉木代表にとって悲願でした。ガソリン暫定税率の廃止と並び、同党の主要な公約でした。玉木氏は、この合意が「民意が動かした結果」であり、「国民のみなさんから託されたミッションがコンプリートした」と述べ、喜びを隠せない様子でした。高市首相も「合意は政治の安定を望む国民のため、両党の間で知恵を絞った結果」と評価し、今後の協力を強調しました。
この合意の背景には、自民党税制調査会の人事刷新があります。長らく減税を阻んできた宮沢洋一参院議員が更迭されたことで、税調のしがらみが解消され、「年収の壁」突破の素地ができたとされています。玉木氏が高市氏に深い感謝を抱く一方で、高市氏には多数派工作という別の狙いがありました。
高市首相と玉木代表の会談風景
高市首相の多数派工作と「ASライン」の役割
自民党と国民民主党は、麻生太郎副総裁と榛葉賀津也幹事長による「ASライン」と呼ばれるホットラインを通じて、岸田文雄内閣時代から連立の可能性を探ってきました。高市氏が今年10月の総裁選で当選した後も、麻生氏の後ろ盾を得て国民民主党に接近しました。これは公明党が連立を離脱する一因となりましたが、連立自体には至っていませんでした。
「ASライン」は、麻生氏と榛葉氏の頭文字を取ったもので、非常に強固な絆で結ばれているとされます。このラインでの交渉により、「年収の壁」での合意が見られれば、国民民主党が2026年度予算に賛成することが確約されました。この見通しが、高市氏をより積極的に動かしたと伝えられています。麻生氏が高市内閣の生みの親とされていることを考えると、高市氏のこの動きは自然なものと言えるでしょう。
連立の可能性と自民党の新たな連携先模索
現在、自民党と連立を組む日本維新の会は、衆院定数削減を巡って連立離脱を示唆するなど、その姿勢は必ずしも安定的ではありません。このような状況を受け、自民党は新たな連携先を模索しており、その筆頭が国民民主党です。
今回の「年収の壁」を巡る合意と2026年度予算案への賛成は、自民党と国民民主党間の関係を一層深め、今後の政局に大きな影響を与える可能性があります。国民民主党が「気分はもう与党」との見方もある中で、両党の連携がどこまで進展するのか、今後の動向が注目されます。





