新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大防止に向けた政府の対応が後手に回っている。中国湖北省武漢市から帰国した邦人のウイルス検査は任意で、29日に民間チャーター機で帰国した2人が一時検査を拒否した。無症状でも感染が「陽性」となったケースがあり、潜伏期間中の二次感染の可能性もあるが、現時点では帰国者を強制隔離できない。他国では帰国者を一定期間隔離するのが常識で、日本の法整備の抜け穴が浮き彫りになっている。(奥原慎平)
「本人のためだと説得したが、法的拘束力がないということで、残念ながら、こういう結果になった」
安倍晋三首相は30日の参院予算委員会で、武漢市から29日に帰国した邦人のうち、2人が帰国後の検査を拒んで自宅に戻ったことを苦渋混じりにこう語った。
首相は「人権の問題もあり、踏み込めないところもある」とも指摘。加藤勝信厚生労働相も「これ以上、私どもの法的な権限がない」と語った。
政府は邦人の帰国が始まる前日の28日、新型肺炎を感染症法に基づく「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定する政令を閣議決定した。これにより、感染が疑われる入国者には、空港や港の検疫所が強制的に診察や検査を行えるようになる。ただ、施行日の2月7日までは個人の同意が必要で、症状が出ていない人は対象外になる。