《平成28年、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を殺傷したとして殺人などの罪に問われた元職員、植松聖(さとし)被告(30)に対する裁判員裁判。事件で重傷を負った尾野一矢(かずや)さん(46)の父、剛志(たかし)さん(76)の質問が続く。尾野さんは植松被告がこれまで主張してきた「重度障害者は意思疎通できないから必要ない」という点について質問を重ねていく》
《植松被告が事件について何を思うのか、被害者や自身の友人、親について何を思うのか質問する尾野さんに対し、植松被告は淡々と謝罪の言葉を並べ、時に傲慢とも言える態度で「答える必要はないと思います」などと返答する》
尾野さん「どうやって(入所者と)意思疎通しようと思ったんですか」
植松被告「普段から接しているので。やっぱり言葉を理解できない方もいるな、と思ってました」
尾野さん「意思疎通ができない人というのはどういう人を指しますか」
植松被告「一番下のラインは名前、年齢、住所が言えないということですが、会話ですね。一方的に話すのではなく、言葉のやり取りをすることだと思います」
尾野さん「質問を変えます。質問が重複する部分もありますが、あなたは初公判で『おわびします』と述べた。誰のことを指してそういったのか。教えてください」
植松被告「皆さんです」
尾野さん「皆さんとは誰ですか」
植松被告「亡くなられた方、ご家族、自分のせいで迷惑をかけた方々です」
尾野さん「きょうもその気持ちは変わっていませんか」
植松被告「はい」
尾野さん「もう一度自分の口でその気持ちを言ってくれますか」
植松被告「誠に申し訳ございませんでした」
《証言台の前に座ったまま、尾野さんを向いて頭を下げる植松被告。言葉とは裏腹に口調は終始淡々としており、心中はうかがえない》
尾野さん「おわびをしている今の気持ちは受け止めたいと思います。あなたのした犯罪は社会に受け入れられないと思うし、私たち家族も受け入れることはできない。まして、絶対に許すこともできない。それは理解していただけますか」
植松被告「仕方がないと思います」
《植松被告に対して誠実に対峙(たいじ)しようとする尾野さんに対し、ひとごとのように話す植松被告。尾野さんの質問は植松被告の生い立ちや友人関係に移る》
尾野さん「子供の頃のことを聞かせてほしい。どんなところで遊んでいましたか」
植松被告「どんなところって…海とか川とかです」