「刻々と過ぎる時の流れは、厳しい現実を私たちに突きつけている」。令和初となった7日の北方領土返還要求全国大会で採択された「アピール」は、戦後74年が経過してなお領土問題前進の見通しが立たない中、北方四島の元島民の高齢化が確実に進む切迫感を色濃く反映した内容になった。
大会のアピールは例年、官民でつくる実行委員会が元島民の意見を踏まえ、文言などを考案する。今回、島民だった1万7291人について、前回大会にはなかった「故郷を追われた」という表現を新たに加えた。
日露両政府の交渉で、ロシア政府は一貫して北方四島を「第二次世界大戦の結果、ロシア領となった」(ラブロフ外相)と主張している。アピールに「不法に占拠」は復活しなかったが、北方四島が他国に一度も帰属したことがない日本固有の領土であるという日本政府の方針は盛り込んだ。「多くの方々は、生まれ育った故郷に戻ることなく亡くなった」とし、無念さをにじませた。
領土交渉について、今回は「活発な外交交渉が重ねられているが、残念ながら具体的な進展は見られない」と総括した。前回大会で評価した日露首脳会談への言及は消えた一方、交渉停滞の背景について「昨今の複雑な国際情勢の影響」と言及。東アジア情勢をめぐり米国やロシア、中国、韓国、北朝鮮が対立する中、日露2国間の領土交渉が険しさを増しているとの認識を示した。(永原慎吾)