【カイロ=佐藤貴生】シリア北西部の反体制派武装勢力の最後の拠点であるイドリブ県で10日、アサド政権軍がトルコ軍の駐留基地を攻撃し、同国軍兵士5人が死亡した。政権側は3日に攻撃を行ってトルコ側の兵士ら8人が死亡したばかり。トルコはこれを受けて5千人の兵力や1200台以上の軍事車両を現地に投入したもようで、双方の衝突の激化が懸念される。
中東のメディアによると2011年のシリア内戦勃発以来、アサド政権軍は反体制派武装勢力と、トルコ軍はシリアの少数民族クルド人の民兵組織などと戦ってきたが、直接衝突した例はほぼなかったという。
事態の沈静化に向け、アサド政権の後ろ盾であるロシアの当局者がトルコの首都アンカラでトルコ側と協議しているが、目立った成果は発表されていない。
ロイター通信によると、政権軍の10日の攻撃は、トルコ軍が新たに設けたイドリブ市街東方のタフタナズにある基地が標的となった。政権軍が3日に攻撃を行った交通の要衝サラケブの北に位置しており、トルコ側はただちに報復攻撃を行ったとしている。
トルコは2018年、自国への難民の大量流入を受け、イドリブ県の周囲に監視ポストを設けてイスラム過激派の武装解除を主体的に行うことでロシアと合意。しかし、アサド政権は、武装勢力が居座ったままで、トルコは領土を侵犯しているとして批判してきた。
国連は10日、イドリブ周辺での戦闘激化により1週間で10万人近くが避難したと発表した。昨年12月上旬以降の避難民の総数は約70万人に上るとしている。