防衛省が、北朝鮮の弾道ミサイルを電波で妨害できる装備の導入に着手することが11日、分かった。ミサイルと地上との電波の送受信を妨害することで地上からミサイルを捕捉できないようにして自爆に導いたり発射を抑止したりすることを目指す。令和2年度から研究を始め、5年程度で自衛隊に導入する方針で、現行の装備では不可能な発射直後の上昇段階でミサイルに対処できるようになる。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射する際、地上基地で航跡や機器の状態を捕捉できるようミサイルから情報を伝えるテレメトリーと呼ばれる電波が発せられる。ミサイルと基地の間を行き交う電波に強い電波を照射し、混信などを起こさせ送受信を遮断したり誤った信号を送らせたりすれば、位置が確認できなくなる。軌道を外れて中国に着弾することが最悪の事態で、その危険性を認識できなくすることで発射を抑止する。
地上基地への電波送信や緊急時などに地上基地からの制御信号の受信が途絶えた場合、ミサイルを自爆させるプログラムが組まれているとも想定しており、電波妨害で自爆させる防御効果が期待できる。北朝鮮はミサイルの飛行データの収集も困難となり、発射に伴う能力向上に歯止めをかけることにもつながる。
防衛省は装備の導入に向け2年度予算案で「対空電子戦装置の研究」に38億円を計上した。最初の目的として敵の陸・海上部隊への対処を念頭に置く陸上配備型の電波妨害装備をより遠方にいる敵航空機のレーダーを無力化できるようにするため参考品を取得する。
参考品の装備は陸上自衛隊に置き、遠くまで強い電波を照射できるよう出力強化などの研究を行い、北朝鮮の弾道ミサイルも電波で妨害できるようにする。
装備の候補は陸自が導入するネットワーク電子戦システムが有力だ。同システムは指揮統制や電波の収集と妨害を担う5種類の車載型装備で構成され、陸自は2年3月から本格的に配備を始める。電波の出力を強化するには電波を放射するアンテナの拡充と内部機器の改良が課題となる。