【よみがえるトキワ荘】未来へ(5)「10年後に、いい街になる」





外装の仕上げが行われている「トキワ荘マンガミュージアム」=15日、豊島区南長崎(鵜野光博撮影)

 「この街は、すぐにではないが10年たてば、いい街になる」

 昨年5月、この連載の取材で「トキワ荘」の地元に住む羽場宏祐さん(77)は、そう話した。羽場さんは「としま南長崎トキワ荘協働プロジェクト協議会」の幹事長で、日本テレビアート社長などをへて現在、映像関連会社インターナショナルクリエイティブ(港区)の取締役最高顧問を務めている。

 平成28~29年の「トキワ荘マンガミュージアム」整備検討会議では、元住人の水野英子さんとともに「本物に忠実な再現」を強く主張した。「漫画のミュージアムは全国にあるが、トキワ荘全体の再現は世界でここだけ。漫画家を志す人は、必ず来る聖地になる」

 開館が1カ月あまり後に迫ったミュージアム。15日に訪れてみると、建物は外装の仕上げが行われ、内装工事の人々も出入りしていた。近くでは、観光バス用の駐車場が工事中。入り口に近い時計店「スエヒロ堂」は、来館者が立ち寄るショップに生まれ変わるべく、全面改装工事の真っ最中だ。

 ただ、それ以外の動きは商店街に見えない。東京都豊島区は来館者を年間6万人弱と試算し、月に約5千人がやってくる計算。受け止める準備は進んでいるのだろうか。

 今月再び取材した羽場さんによると、地元では基盤整備▽情報発信▽商品開発▽イベント-の4つのプロジェクトを設け、来館者に喜ばれるグッズや、最寄り3駅からの動線づくりの検討などに取り組んでいるという。「2段階に分けて考えていて、一つはトキワ荘を忠実に再現し聖地にする。次の段階が商店街の活性化。ただ、これは時間がかかりますよ」

 シャッター街だからという理由だけではなく、「昔はにぎわっていたが、ここはもともと外部からお客が来る商店街ではなかった」と羽場さん。「住宅地の生活環境として作り上げた商店街で、ここで『明日からみやげ物を売って』と言っても、誰もやらない」

 そうした特徴を踏まえた上で、「開館後、月に5千人が来るようになれば、若い商店主らが動き始めるだろう」と期待する。一方で、観光バスの客が商店街を歩いてくれるにはどうしたらいいか、西武池袋線東長崎駅の駅舎に付いている鐘を、鳴らすことはできないか…などと知恵を絞っている。

 「名物の食べ物ができたり、こじゃれた飲み屋ができたりすれば来る人は増える。いい街になる。前は10年と言ったが、もっと早くがいい(笑)。また日は昇りますよ、必ず」。笑顔でそう語った。



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