【ロンドンの甃】世界の紙幣が減るかも


 「キャッシュレスを始めようと思っているんです」

 たまにコーヒーを買いに行くロンドン市内のカフェ。2月下旬ごろ、顔なじみの店主が急にそんなことを言い出した。

 そのカフェはキャッシュレス決済が普及する英国にしては珍しく、現金払いしかできない店だった。キャッシュレス決済の導入を検討し始めたのは、世界で感染が広がる新型コロナウイルスの影響のようだ。

 感染症の専門家によると、新型コロナウイルスが付着した紙幣を他の人が触れば感染する恐れがあるという。実際、感染が集中する中国本土の銀行で感染防止のため紙幣を消毒したとの報道も目にする。店主は、紙幣からの感染リスクを知った店主の妻から「現金払いを受けつけないで」と言われたらしい。

 感染への危機感からキャッシュレス決済に切り替える店舗は徐々に増えているようだ。キャッシュレス決済のサービスを国内外で運営する英企業の関係者は「今こそ、サービスを世界に売り込むチャンスだ」と意気込む。キャッシュレス化が遅れた国からも引き合いが多くなっているそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、世界全体の紙幣の流通が大幅に減ると予測する人さえいる。感染への不安が経済を大きく変貌させる可能性があることを実感した。(板東和正)



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