【国際情勢分析】現地報告/サンダース氏を失速させた米国の価値観とは 大統領選民主党候補指名争い

[ad_1]



米東部ニューハンプシャー州で、大統領選の民主党候補指名争いの同州予備選に勝利し、ガッツポーズをみせるサンダース上院議員=2月11日(ロイター)

米東部ニューハンプシャー州で、大統領選の民主党候補指名争いの同州予備選に勝利し、ガッツポーズをみせるサンダース上院議員=2月11日(ロイター)

 米大統領選に向けた民主党の候補指名争いは、2月の序盤戦で勢いをみせた急進左派のサンダース上院議員(78)と低迷していたバイデン前副大統領(77)の形勢が逆転した。3月に入り、分散していた中道穏健派の票がバイデン氏の下に集結したためだが、当初から有権者の間で「国民を一律に扱うサンダース氏の政策は社会主義的で、自己決定を尊ぶ米国の価値観を否定する」という警戒心がくすぶっていた。現地取材で聞いた話を基に逆転劇の背景を報告する。(外信部 平田雄介)

 「民主社会主義者」を自称するサンダース氏の公約のうち、代表的な政策が「国民皆保険の導入」だ。

 米国の公的医療保険には65歳以上の高齢者と65歳未満の障害者を対象とした「メディケア」と、低所得者向け「メディケイド」の2種類あるが、これらの対象とならない人は民間の医療保険への加入を検討することになる。ただ、民間の保険は掛け金が高いことも多い。国勢調査局の統計によると2018年の保険未加入者は2750万人、国民の8・5%に上る。

 サンダース氏は「先進国で国民皆保険を導入していないのは米国だけ」と問題視。集会では「破産の理由の第1位は高額な医療費」と指摘した上で、国民皆保険の導入を含む公約の実現に向け「富裕層や大企業への増税を行う」と主張し、喝采を浴びる。ただ、一歩陣営の外に出ると違和感を口にする人の方が多い。

 ニューハンプシャー州予備選(2月11日)の際、中道穏健派のブティジェッジ前サウスベンド市長(38)=撤退し、現在はバイデン氏を支持=の集会で話を聞いた作家のアダム・クーマンさん(38)は「サンダース氏の唱える政府が一元管理する公的医療保険制度の下で民間の保険は廃止されるかもしれない。それはサービスの手厚い民間の保険に入りたいと望む人の選択肢を奪うことを意味する」と話し、自らが加入する医療保険の質が低下することを心配していた。

 また、バイデン氏を支持する元エンジニアのカール・アズモンドさん(73)は、サンダース氏の目指す医療保険改革が実現すれば、「既に加入しているメディケアの内容も変更されるかもしれない。個々の事情を無視した改革には問題がある」と話していた。

 トランプ大統領の支持者になると、批判はさらに厳しい。西部ネバダ州のキリスト教福音派教会の幹部、サンディ・ホールさん(73)は「頑張っても、努力をしなくても、受けられる医療サービスの質が同じになってしまったら、国民は懸命に働くことを止め、堕落する」と切り捨てた。

 米国では、伝統的に、個人の自由と責任を重視し、政府の国民生活への関与は小さくあるべきという考え方が支配的だ。中西部アイオワ州で4代続く農家を営むブライアン・ビアードさん(44)は「移民として米国に来て、独力で農地を切り開いた曾祖父を尊敬している」として、「福祉を重視する民主党より雇用を増やすトランプ氏の考え方が好きだ」と話していた。

 一方、失速したとはいえ、2月の序盤戦でサンダース氏が優勢に立ったことは、移民国家の歴史を背景とした米社会の変容を示す。陣営ボランティアのジュネラ・クレイさん(42)は「マッサージ、高齢者の介護、清掃とパートタイムの仕事を3つ掛け持ちしても生活するのがやっと。医療保険にも入れない。英国から移民した祖母は『米国ではより良い明日を信じて生きられる』と話していたが、私はそんなふうに思えない」と記者に訴えてきた。

 肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染が拡大する米国において、医療格差の問題が深刻化すれば、米社会の変容は一層進むかもしれない。

[ad_2]

Source link