【正論5月号】「官邸の検察介入」 無理筋のシナリオだ 産経新聞政治部次長 水内茂幸



衆院予算委員会分科会で、検察官の定年延長の経緯を説明する森雅子法相=衆院第3委員室(春名中撮影)

 ※この記事は、月刊「正論5月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

 政府は1月31日の閣議で、2月7日で退官予定だった東京高検の黒川弘務検事長の定年を半年間延長した。メディアでいち早くこの人事に疑問を投げたのは朝日新聞だった。

 閣議決定翌日の2月1日付朝刊では「異例の手続き」と表現。「次期総長の人選は昨年末から官邸と法務省で検討を開始。複数の候補の中から、官邸側が黒川氏を就任させる意向を示したという」と解説した。

 同4日付の朝刊では「検事長定年延長に波紋 首相・法相、詳細語らず 野党は批判」と題した特集記事も掲載した。記事では「安倍政権との距離が近いとされる黒川氏が、検察トップの検事総長に就く可能性が残ったことになる」と指摘し、「首相を逮捕するかもしれない機関に、官邸が介入するだなんて、法治国家としての破壊行為」とする立憲民主党の枝野幸男代表のコメントを紹介した。

 国会では、朝日に呼応するように、野党が次々と追及を始めた。

 枝野氏は2月26日の衆院予算委員会で「この方を検事総長に充てようとしているのは、『桜を見る会』の捜査を防ごうとするためではないかと疑われている」などと指摘。森雅子法相は、今回の人事で首相や菅義偉官房長官からの指示は一切なかったと反論したが、同日の質疑では、国民民主党の玉木雄一郎代表までこの問題を取り上げ「人事は違法」などと批判を重ねた。

稲田検事総長の居座り

 今回の定年延長がここまで波紋を広げた背景には、検察の人事をめぐる複雑な構図がある。

 黒川氏は「花の35期」と呼ばれる司法修習35期で、その中でも特に優秀と評価が高い。ただ、同期には同省刑事局長や官房長を歴任した林真琴・名古屋高検検事長というもう一人のエースがいる。刑事司法界では両氏とも「検事総長候補」と目されてきた。

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