新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府が発令した緊急事態宣言は、衆院静岡4区補欠選挙(14日告示、26日投開票)に向けた自民党の戦い方にも影響を及ぼしている。宣言の対象区域に東京が含まれたことから、感染拡大を恐れる地元側が、東京から来訪する国会議員の応援を拒否。制約の多い選挙戦に与党の懸念は増すばかりだ。(内藤慎二、広池慶一)
「たいへん難しい工夫を要求される選挙だが、民主主義を守るためにも、皆で力を合わせてしっかりと勝ち抜きたい」
自民党の岸田文雄政調会長は9日、岸田派(宏池会)の会合でこう強調し、昨年死去した同派の望月義夫元環境相の後継候補として出馬する元県議への支援を訴えた。
この日の会合は、新型コロナの問題を受け、派閥結成以来初めてテレビ会議形式で行われた。緊急事態宣言の影響は望月氏の弔い選挙にも波及している。
党静岡県連は感染拡大を恐れ、党本部側に、県内での国会議員の応援を控えるよう求めた。このため、県外からの選挙応援は、期日前投票の利用などを有権者に呼びかける電話作戦が中心になりそうだ。
自民党は集会の開催や握手などを控える方針も決めている。特に屋内集会は、政府が避けるよう求める密閉、密集、密接の「3密」に当てはまる可能性があるからだ。
元県議の陣営関係者は「自民党が得意とする組織的な集会ができないのは非常に痛い」と嘆く。選挙を盛り上げる決起大会や出陣式も今回は開かない方針だ。街頭演説で支援者らと交わす握手も、接触感染の恐れがあるため自粛する。
党選対幹部は「有権者と濃厚接触したら、逆に反感を買うだけだ。手足を縛られている状態でどのようにやるか知恵を絞らないといけない」と語る。
代替案の一例が、インターネットを活用した選挙活動だ。党本部はすでに、SNS(会員制交流サイト)で発信する情報を拡散させるよう組織的に動いている。元県議の陣営関係者も「SNSに頼る部分は大きい」と語る。
ただ、投票率が比較的高い高齢者には、SNSが苦手な人も多く、支持拡大には限界があるとの見方がある。そもそも政府が新型コロナ対策を誤れば、批判票が一気に野党候補に流れる恐れもあり、与党は先行きの見えない戦いに戦々恐々としている。