日本銀行が9日公表した地域経済報告(さくらリポート)では全9地域の景気判断が引き下げられ、新型コロナウイルスの感染拡大の悪影響が全国的に広がっている実態が浮き彫りになった。とくに個人消費や生産、雇用に影響が直撃。先行き懸念から設備投資を下方修正する動きもあり、新型コロナの感染拡大に警戒感が強まっている。
「新型コロナ感染症が世界的に広がるもとで、家計と企業部門で下押し圧力が強まっている」。同日会見した日銀の山田泰弘大阪支店長はこう強調した。
新型コロナの影響が最も大きく出たのが、項目別の判断で全9地域が下方修正した「個人消費」だ。
外出自粛や移動制限を受け、宿泊業や飲食業では需要が消失した。企業からは「訪日客に加え、足もとでは国内観光客も大幅に落ち込んでいる」(京都の宿泊)、「外出控えや宴会自粛などの動きがみられ、売り上げが大幅に減少している」(大阪の飲食)といった声が出た。
サプライチェーン(供給網)への影響や大手自動車の生産停止などで「生産」も近畿など5地域で判断が下方修正された。企業側からは「世界各地の完成車工場が停止したことで、部品輸出が減少している」(名古屋の自動車関連)といった指摘が出た。
引き続き人手不足感は強いが、雇用への影響も出始めている。東海など5地域が「雇用・所得」の判断を下方修正。一部では「世界的な自動車販売の落ち込みを受け生産量が減少しているため、派遣社員の契約更新を見送ったほか、新規求人の募集をやめた」(福島の精密機械部品)などと問題が深刻化している。
「設備投資」は東海と中国の2地域が判断を引き下げた。「世界販売の先行き不透明感が一段と高まり、能力増強投資を縮小した」(名古屋の自動車関連)などと、先行きを懸念する声も相次いだ。
日銀は今回の結果なども踏まえ、27、28日に開く金融政策決定会合で、景気の現状などを議論する。3月の会合に続き、追加の金融緩和を打ち出すかどうかが焦点となる。
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