【ソウル=桜井紀雄】15日に投開票が行われた韓国総選挙(定数300)は16日も開票作業が続いた。与党「共に民主党」は、系列の比例代表政党「共に市民党」と合わせ、改選前の128議席から50議席以上伸ばして180議席の獲得が見込まれ、圧勝した。革新系政党が単独で議席の過半数を得たのは2004年の総選挙以来、16年ぶり。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で不安が高まる中、有権者が現政権による安定的な国政運営を望んだと分析されている。
国会で5分の3である180議席を占めれば、法案処理で極めて有利になる。ただ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領はいわゆる徴用工判決問題などで従来の立場を維持するとみられ、日韓関係の劇的な改善は期待できそうにない。
与党は小選挙区で首都圏の激戦区の多くを制し、163議席を固めた。比例でも共に市民党が17議席を得る可能性が高い。
特にソウル中心部の選挙区では、与党の李洛淵(イ・ナギョン)前首相が、最大野党「未来統合党」代表で元首相の黄教安(ファン・ギョアン)氏を20ポイント近い大差で破った。李氏は次期大統領選の有力候補と目され、「ポスト文在寅」に向けて弾みをつけた形だ。黄氏は15日深夜、敗北の責任を取るとして辞任を表明した。
未来統合党は、昨年まで院内代表として黄氏とツートップを務めてきた女性有力候補の羅卿●(=王へんに援の旧字体のつくり)(ナ・ギョンウォン)氏も落選。系列の比例政党と合わせても103議席にとどまる見通しで、執行部の責任を問う声が高まりそうだ。
一方、脱北した北朝鮮の元駐英公使で、未来統合党公認候補としてソウル市内の小選挙区から出馬した太永浩(テ・ヨンホ)氏は当選。脱北者でつくる比例政党「南北統一党」は議席獲得はなかった。共に市民党からは元慰安婦の支援団体前代表、尹美香(ユン・ミヒャン)氏が当選を決めた。