緊急経済対策を盛り込んだ令和2年度補正予算が成立した。国民すべてに10万円を配るという政策転換に伴い、いったん閣議決定した予算を組み替える異例の展開をたどった末の成立である。
新型コロナウイルスの感染拡大で経済が凍り付き、すでに多くの事業者や家庭が苦境の渦中にある。しかもそれは、日を追うごとに深刻さを増している。
国会が休日返上で成立させたのは当然で、むしろ、政府・与党は今一度、支援が遅れている現状を厳しく受け止めるべきだ。
まずなすべきは、補正予算に基づく支援の手を一刻も早く企業や家庭に届けることである。これまでは雇用調整助成金といった諸制度について、手続きの煩雑さや遅れがたびたび指摘されてきた。同じ轍(てつ)を踏んではならない。
政府や自治体はもちろん、企業の資金繰りを支える金融機関も一体となり、迅速で確実な助成や融資に全力を挙げてほしい。
その上で間髪を入れず支援の拡充策を講じる必要がある。安倍晋三首相は補正成立後、記者団に緊急事態宣言を延長する考えを示した。経済活動の自粛が長引くなら、2次補正予算の編成を含む追加策が欠かせまい。
少なくとも今回の緊急経済対策では、事業継続が危ぶまれる事業所や、困窮する世帯の不安は解消されず、多くの課題が残った。
売り上げが蒸発し、家賃支払いなどの固定費捻出が難しくなった事業者への支援もそうだ。政府は最大200万円の給付金などで経営を支える考えだが、要件や金額への不満はなお多い。
野党5党が家賃負担を支援する法案を共同提出したほか、自民党の岸田文雄政調会長からも助成と融資を組み合わせた新たな提案があり、安倍首相は前向きに検討する姿勢を示している。ならば早急に具体化を図るべきだ。
休業要請に応じた企業の補償問題もある。政府は経済対策に盛り込んだ総額1兆円の臨時交付金について、都道府県が支給する休業協力金への活用を認めているが、それで足りるのか。首相が緊急事態宣言延長を最終決定する際には、併せて最適な休業支援について明確に発信してほしい。
前例なき経済危機である。対策に不十分な点があれば、躊躇(ちゅうちょ)せずに改めればいい。大切なのは、国民を守る果断な行動である。