静岡、浜松両市の「財政調整基金」が逼迫(ひっぱく)している。基金は緊急時に備えた自治体の貯金に相当するが、新型コロナウイルス感染症対策で補正予算を繰り返し編成し、財源の一部を基金の取り崩しでカバーしてきたためだ。県内は政府の緊急事態宣言が解除されたとはいえ、休業要請で冷え込んだ地域経済の回復に向けて追加の財政出動も見込まれる中、両市は事業見直しなどを通じて財源を捻出する構えだ。
静岡市は13日発表した感染症対策第3弾となる一般会計約45億円の補正予算案に、基金から約20億円を取り崩した。これにより基金残高は約1億円と底をつきつつある。市の財政担当者は「ここまでの落ち込みはかつてない」と話す。
田辺信宏市長は同日の記者会見で「今こそ基金を取り崩してでも市民に寄り添った政策を打ち出すべきだ」と強調した。一方、田辺氏は厳しい財政事情を踏まえ、昨年の市長選で掲げた公約を含め「既存事業の見直しをしなければならない。聖域をつくらない」と断言した。
市によると、基金は令和元年度末見込みで約76億円だったが、今年度当初予算編成で約35億円を充当。その後、感染症対策として補正予算を3回編成し、基金から計約41億円を活用した。枯渇しつつある基金を増やすため、市は今後、既存事業の見直しに加え、感染症で中止になった大規模イベントで使うはずの未執行分の事業費や繰越金などを基金に上積みすることを検討している。
政令指定都市移行後、毎年度約150億円を維持していた浜松市の基金も「かつてないほど逼迫している」(財政課)。基金は令和元年度末見込みで約93億円だったが、今年度当初予算に約50億円を充てた。その後も感染症対策を盛り込んだ補正予算の財源として基金を取り崩し、約10億円しか残らない状況だ。