【モスクワ=小野田雄一】ロシア外務省のザハロワ報道官は、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)と英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が「ロシアは新型コロナウイルスの死者数を過少報告している可能性がある」などと報じたことについて、「ディスインフォメーション(偽情報)だ」とし、今後の両紙の対応次第では露国内での報道機関登録の剥奪もありうるとの認識を示した。イタル・タス通信が伝えた。
NYT(電子版)は11日、モスクワ市が毎月公表している死者数の統計を基に「市当局が公式に発表している新型コロナの死者数は642人だが、4月の同市の死者数は過去5年間の平均を1700人上回っていた。重大な過少報告を示唆している」と報道。FT(同)も同日、モスクワ市とサンクトペテルブルク市の統計を基に「ロシアの新型コロナによる死者数は公式発表より70%増加する可能性がある」と報じた。
これに対し、露外務省は13日、死者数の過少報告を否定し、「記事はロシア側に事実確認せずに書かれた。西側メディアによる反露キャンペーンの一環だ」などとする声明を公式サイトに掲載。露下院委員会は「両紙の報道機関登録の剥奪も検討すべきだ」とする見解を露外務省に示した。
ザハロワ氏は同日、報道機関登録の即時剥奪はしないとする一方、「両紙に(外務省の指摘に対する)反論を求める書面を送る。今後の措置は彼らの対応次第だ」とし、両紙の対応次第では厳しい措置を取る可能性も示唆した。
NYTはタス通信に「報道は正しく、抗議を受けるものではない」と表明している。
ロシアでは14日時点で計25万人超が新型コロナに感染。死者は約2300人で、死亡率が他国より低いと指摘されている。露保健当局は「新型コロナに感染していた場合でも、死因に応じて死者にカウントしない場合がある」とし、過少発表ではなく統計手法上の問題だとしている。