日本でインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷が社会問題化する中、米国でも黒人暴行死事件に関連するトランプ米大統領の投稿を機に、交流サイト(SNS)の運営の在り方が問われている。トランプ氏の投稿は「暴力賛美」と問題視され、ツイッターなどが批判的な立場をとるが、フェイスブックは事態を静観しており対応は割れている。米国ではSNS運営企業に投稿の削除などに関する広い裁量が与えられている一方、表現の自由を尊重する意識も強く、論争は続きそうだ。(ワシントン 塩原永久)
「人種間の暴力や不正義をあおる声を増幅させない」
動画・写真共有サイトのスナップチャットを運営する米スナップは3日の声明で、トランプ氏が投稿した映像を一部サイト内で表示しない方針を決めた。
トランプ氏は白人警官による黒人暴行死事件をめぐりSNSでの発信を続けている。5月29日にはツイッターへの投稿で事件後に各地で起きる暴動に触れ、「略奪が始まれば発砲が始まる」と言及。ツイッターはこの投稿に「暴力の賛美」との警告を表示した。
米国ではSNSの運営企業は米通信品位法230条のもと、名誉毀損(きそん)や暴力助長といった問題のある投稿について、削除や表示を制限する判断の幅広い裁量があると解釈されている。
一方、フェイスブックのザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)はトランプ氏の同様の投稿を静観している。「表現の自由を約束したリーダーとして対応する責務がある」として、トランプ氏の発信を阻害しない立場をとっている。
ツイッターに反発するトランプ氏はSNSの規制強化などを目指す大統領令に署名して圧力をかけている。しかしトランプ氏の規制方針は同じ表現の自由の観点から批判され、非営利団体の民主主義・技術センターは2日、合衆国憲法に反するとして提訴した。
米コロンビア大学のティム・ウー教授は「SNSが(政府からの)独立性を保てるのかが試されようとしている」と指摘し、適切な運営に向けた企業側の自助努力を促している。