【ロンドン=板東和正】英政府は11日、ジョンソン首相と欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長が15日にテレビ会議形式で会談すると発表した。自由貿易協定(FTA)締結など、新たな関係の構築に向けた交渉の打開策を協議する。年末としている交渉期限の延長についても話し合うが、英国は延長を拒否する見通し。
1月末にEUを離脱した英国は、年末までEUと従来の経済関係を保つことが決まっている。急激な環境変化を緩和するために英EU間で合意した方針で、英国は年末まで離脱前と同じようにEU加盟国と関税なしで貿易できる。
英EUはFTAや外交・安全保障関係での合意を目指し、3月上旬に交渉官レベルで協議を開始。双方はFTAで関税や輸入割り当てを設けない方針では一致しているものの、公正な競争条件の確保や漁業権をめぐって対立している。
EUは、英国が環境、労働、税制、政府補助金をめぐる規制をEUと同等の水準にし、公正な競争条件を保つよう求めている。英国が規制を緩和・撤廃し、安い製品を輸出するようになれば、EU企業に不利になるからだ。英国はEUの規制に従うつもりはないと主張している。また、EU側は漁船の英国水域での操業継続もFTAに含めるよう求めているが、英国は難色を示している。
交渉は膠着(こうちゃく)状態となっており、FTAの年内合意は困難とみられている。EUが過去に締結したFTAは交渉開始から発効まで平均約6年かかっており、年内の妥結はそもそも難しいとされていた。
EU側は交渉の時間をより長く確保するために、英EUが従来の経済関係を保てる期間を延長する方針に前向きだが、早期の「完全離脱」を目指す英国側は拒否し続けている。
交渉期限を延長しないまま年内の合意が見送られれば、英EU間の貿易には世界貿易機関(WTO)の規則が適用され、関税が発生する恐れがある。