「オクシズ」と呼ばれる静岡市葵区の中山間地、黒俣地区に民間業者による太陽光発電施設の建設計画が浮上し、土砂崩れなどを心配する地域住民が反発している。これを受け同市の田辺信宏市長は24日、建設予定地を視察し、業者側に説明を求めるとともに、関連条例改正を含め規制強化策について検討する考えを示した。
市などによると、太陽光発電施設の建設予定地は黒俣地区を通る県道を挟んだ「川側」と呼ばれる山林の斜面。山林の下には黒俣川が流れる。伐採面積は0・9ヘクタールで、約2600枚のソーラーパネルが設置される予定だ。一方、県道を挟んだ「山側」の斜面には別の民間業者がソーラーパネル約3400枚を設置し、昨夏から稼働している。
住民が問題視するのは、山側の太陽光発電施設の入り口にある排水溝だ。土砂や枝葉で排水溝は目詰まりし、大雨であふれ出た雨水や土砂が県道に流出したこともあるという。
ずさん管理ともいえる事態に業を煮やした住民側は、新たな太陽光発電施設が建設されることで、伐採による土砂崩れや流れ込んだ大量の土砂で黒俣川がせき止められてしまう危険性を指摘する。視察した田辺市長も「台風シーズンを控え、土砂崩れが起き、いわば人災になる可能性も否定できない。排水溝も役割を果たしておらず、工事自体がずさんだったのではないか」と強調。規制強化策に関しては「何ができるか検討したい」と明かした。
この日の視察に先立ち、地域住民は18日、太陽光発電施設の建設を計画する業者を招いて説明会を開いた。業者側は懸念される土砂崩れについて「側溝を設けて雨水を沢に誘導する」などと理解を求めたが、黒俣川下流の清沢地区自治会連合会の前田万正会長は24日、「業者側の説明は具体的な部分が分からない。(自然災害が起きても)『想定外は通用しない』と伝えた。業者側は『大丈夫です』というが、何をもって大丈夫なのか。根拠がない」と語気を強める。
業者側は今年、建設に向けた森林伐採を市に届け出。今後、砂防法に基づく県の許可が得られれば計画は動き出す。前田会長は「基本は建設反対」としつつも、「建設するならば、土砂が流出したり、川が荒れたりするずさんな形にならないよう指導してほしい」と行政サイドに注文した。