【ワシントン=黒瀬悦成】バー米司法長官は16日、中西部ミシガン州で企業関係者を前に講演し、米国の映画産業や大手IT企業が中国市場を意識して「中国共産党と積極的に協力している」と批判し、中国が世界市場を併呑することを阻止するため米企業に協力を呼びかけた。
バー氏は、ハリウッドの映画制作会社に関し、中国での上映許可を得るために映画の台本や描写に自主検閲をかけていると指摘。2013年公開のゾンビ映画「ワールド・ウォーZ」(ブラッド・ピット主演)では当初、人間をゾンビに変えるウイルスが中国で発生したとの描写があったのを、制作会社のパラマウント・ピクチャーズが中国での配給を実現させる思惑からプロデューサーにカットを指示したとしている。
また、アップルが中国政府から要請を受け、香港での抗議活動を詳細に報じていたニュースアプリを削除した例を紹介したほか、グーグルやマイクロソフト、ヤフーについても「中国共産党体制と密接な協力関係にある」と非難した。
バー氏はその上で「中国は米国を追い抜き、世界で第一の技術超大国になるため、政府と社会を総動員して攻撃的かつ念入りな『経済的電撃戦』を展開している」と強調。中国の狙いは先進経済諸国の一員になることではなく、「これらの国々に取って代わることだ」と訴えた。
バー氏はさらに「中国共産党は自らの影響力を米本土など世界全体に拡大させようとしている」と警告。米企業に対し「中国共産党に融和的な対応をとれば短期的な報酬は得られるだろうが、最後は中国に乗っ取られる。自由と繁栄の世界を守るには自由世界が社会全体で取り組んでいく必要がある」と訴え、対中政策での連携を強く促した。