政府が17日に閣議決定した来年度予算編成の指針となる「骨太方針」をめぐっては、焦点となっていた来年度から毎年行う予定の薬価改定の前提となる薬価調査を、事実上、実施はするが、実際に改定するかどうかは今後検討するという玉虫色の内容となった。
関係者によると、調整は調査を実施すべきだとする菅義偉官房長官と自民党厚生労働族の伊吹文明元衆院議長、田村憲久元厚労相による政治決着の場に持ち込まれ、文言は「本年の薬価調査を踏まえて行う薬価改定については、新型コロナウイルス感染症による影響も勘案して、十分に検討し、決定する」となった。
薬価改定はこれまで2年に1度だったが、毎年行うことに変更することが既に決まっている。だが、日本医師会(日医)など業界団体は、新型コロナウイルス感染の影響で正確な情報は把握しづらいとして、調査の見送りを求めていた。ところが、原案に薬価調査の記述はなく、これは毎年調査するという方針を堅持することを意味していた。
日医の中川俊男会長は15日の記者会見で「(調査は)技術的に不可能」と反発。14日の自民党政調全体会議では、厚労族が相次いで調査反対を表明した。
薬価とは公的医療保険で使われる薬の公定価格。薬の市場実勢価格は、販売競争などで薬価より安くなることが一般的だ。実際の価格を調査して、薬価を引き下げることで価格差を解消している。高齢化に伴い医療費が膨張する中、毎年改定することで医療費を抑制する狙いがある。
業界や厚労族の巻き返しは一定程度奏功したが、既定路線を覆すのは容易ではなく、不満は残った。ある厚労族は「とにかく薬価を下げたいのだろうが、コロナ禍で大変な思いをしている現場を分かっていない」と怒りをあらわにした。(坂井広志)