【北京=三塚聖平】中国で、新型コロナウイルス流行を受けて1月下旬から休業していた映画館の営業再開が進んでいる。中国当局が20日以降の再開を認め、首都・北京でも24日から営業が可能になる。ただ、飲食禁止や「1本あたりの上映時間は2時間未満」といった厳しい感染対策を求められている。約半年ぶりの営業にこぎ着けたとはいえ、正常化には程遠い状況が当面は続きそうだ。
20日、上海など中国各地の映画館が次々と営業を再開した。映画業界を所管する国家映画局が16日、「感染リスクが低い地域」で20日から営業再開が可能になるとの通知を出していた。6月に集団感染が発生した北京では、一足遅れる形で24日から再開されると市当局が21日に表明した。
ただ、国家映画局が求めた再開条件は厳しい。中国メディアによると、チケットは実名によるインターネット予約制▽鑑賞中もマスク着用▽1日あたりの上映本数は正常時の半分▽客席の入場率は3割未満-といった措置の徹底が必要だ。上海市内の映画館は「館内では係員が見回りを行う」と話した。
中国誌「財新」(電子版)によると再開初日の20日、全国の映画館の興行収入は約330万元(約5055万円)だった。昨年7月の1日あたりの平均興行収入は1億8600万元だったといい落差は大きい。厳しい感染対策などが影響しているとみられ、財新は「映画館の回復にはまだ時間を要する」と指摘した。飲食も禁止されているので経営に響くとみられる。
映画業界関係者は営業再開への期待を示しつつも、「市場回復の不確実性は大きい。感染がぶり返す可能性はある」と中国紙・経済日報(電子版)に述べ、感染再拡大で再休業を迫られる事態などを懸念した。
現時点での上映作品を見ると、中国でも2017年に公開されたピクサー・アニメーション・スタジオのアニメ映画「リメンバー・ミー」などほとんどが旧作。新作はごく一部にとどまっている。長澤まさみさんも出演する中国映画「唐人街探案3」など、今年1月下旬の春節連休期間に公開予定だった有望作品も控えているが、どのタイミングで公開するか難しい判断を求められそうだ。
中国の映画産業は右肩上がりで拡大を続け、米国に次ぐ世界2位の市場規模を誇るまでに成長している。しかし、新型コロナで大きな打撃を受けており、国家映画局は今年の興行収入の損失額が300億元を上回るとの見通しを4月下旬に示している。