大西洋で発生したハリケーン「エリン」は、記録的な速さで急速に勢力を強め、現在カリブ海を北上しています。その驚異的な発達は、近年の気象パターンと地球温暖化との関連性を示唆しており、専門家の間で警戒が強まっています。
驚異的な勢力変化:カテゴリー1から5へ24時間で
「エリン」は8月16日、一時的に5段階評価で最も強い「カテゴリー5」に発達しました。その後「カテゴリー4」となり、カリブ海北方の広大な大西洋を進んでいます。このハリケーンは、8月15日午前11時には風速約33メートルの「カテゴリー1」でしたが、わずか24時間あまりで風速約71メートルに迫るカテゴリー5に達しました。これにより、「エリン」は記録上、最も急速に勢力を強めたハリケーンの一つとして歴史にその名を刻みました。さらに、9月1日以前に観測されたハリケーンとしては、史上最も急速に勢力を強めた可能性も指摘されています。気象当局は、「エリン」が再び「カテゴリー5」にまで強まる可能性があり、その過程で風の影響範囲もさらに拡大すると予測しています。
大西洋を北上し、カテゴリー5に到達したハリケーン「エリン」の衛星画像
「急速な発達」とは何か?気候変動との関連
「急速な発達」とは、ハリケーンが24時間以内に風速が約15メートル以上強まる現象を指します。例年、このような現象は9月から10月にかけて多く見られます。しかし近年、化石燃料による汚染が引き起こす地球温暖化の影響で海洋と大気の温度が上昇し、大西洋ではハリケーンが勢力を急速に発達させる事例が増加しています。「エリン」も、このような気候変動の影響を強く受けている一例とみられています。海洋温度の上昇は、ハリケーンが勢力を維持し、さらに強化するためのエネルギー源を豊富に供給するため、急速な発達の頻度増加に直結すると考えられています。
増加するカテゴリー5ハリケーンの発生頻度
カテゴリー5のハリケーンは、その破壊的な潜在力から極めて珍しい存在です。史上、大西洋でカテゴリー5に達したハリケーンはわずか43個にすぎません。しかし、近年の傾向を見ると、この状況に変化が見られます。2016年以降に限ってもすでに11個が観測されており、近年はカテゴリー5まで発達する事例が増加傾向にあります。特に今年で4年連続でカテゴリー5のハリケーンが発生しており、昨年には「ベリル」と「ミルトン」という二つの強力なハリケーンが記録されました。8月中旬という比較的早い時期にメキシコ湾以外でカテゴリー5のハリケーンが発生するのは、気象学的に見ても異例の事態です。
「エリン」の今後の進路予測と影響
現在のところ、「エリン」は上陸はしないとみられています。プエルトリコの北を通過した後、針路を北北東に変え、米東海岸とバミューダ諸島の間の大西洋へと進む見通しです。この進路をたどる過程で、勢力は現在の2倍から3倍にまで強まると予想されており、遠方への影響も懸念されます。
まとめ
ハリケーン「エリン」の記録的な急速発達は、単なる気象現象にとどまらず、地球規模での気候変動がもたらす影響の深刻さを改めて浮き彫りにしています。今後も異常気象への警戒と、その根本原因への対策が喫緊の課題となるでしょう。
出典: Yahoo!ニュース