またも「撮り鉄」「葬式鉄」の暴走か――2020年10月19日を最後に引退した列車を追いかけ、駅などに押し寄せた一部の鉄道ファンの行いが物議を醸している。
同好の士への罵声、運行妨害につながりかねない行為も。鉄道ファンの楽しみ方は様々あるものの、なかなか自浄作用が働かないようだ。
■発光体を振り、駅では罵声
JR東日本の京葉線・武蔵野線で運用に入っていた205系電車の最後の1本「M20編成」が、10月19日をもって引退した。引退直前には多くのファンが沿線に集まったが、特に前日の10月18日には、休日ということもあって過激な行為が目立った。
ツイッターには205系を追いかけてきたと思われる、一部の悪質利用者の行動が晒されている。走行中の列車の窓から手を出す明らかに危険な行為もあれば、駆け込み乗車、ホームで密集し大声で叫びながらの撮影などもみられる。なぜか鉄道と無関係なはずの北朝鮮の故・金日成主席の肖像画を窓から掲げたり、星条旗や日の丸を振る乗客。さらにサイリウムとおぼしき棒状の発光体を振り、青い光が車外にちらついていた。なお、さいたま新都心駅・水道橋駅・西武球場前駅などイベント会場の近くの駅では、危険だとしてサイリウムなどを振らないよう係員が呼びかけることもある。
葛西臨海公園駅では駅近くの「ダイヤと花の大観覧車」と絡めた夜景が撮れることからホーム先端にカメラと三脚を構えたファンが集結。彼らは事前に場所取りをした上で列車の到着を待っていたのだが、205系が到着するとわずかな停車時間で写真を撮りたい乗車組のファンらが下車して先頭部分に集まってくる。
場所取りをしていた撮り鉄たちは構図を邪魔されたことに怒り「下がれ!」と罵声を浴びせる。このような光景は「罵声大会」と通称されて問題になっているが、一向になくならない。傾向としては、知名度の高いJRの優等列車や通勤型電車をめぐってこのような事態が起きやすい。
このような状況でしばしば批判されるのは、写真撮影を目的とする「撮り鉄」と、引退する列車を追いかける「葬式鉄」である。撮り鉄の一部はいい写真を撮りたいがために、また葬式鉄は列車の引退という高揚感からか行動がエスカレートしがちだ。