【北京時事】中国の習近平指導部は、海外での経済活動をはじめとする「発展の利益」を保護するため、軍事力を動員すると定めた「国防法」改正草案をまとめた。
米国との関係が悪化する中、草案は軍事紛争に発展する事態も想定して作成されたもようだ。習国家主席は23日の演説で「われわれは国家主権や発展の利益が損なわれるのを決して座視しない」と語った。
全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は21日、パブリックコメントを募集するため草案全文をインターネットで公開した。草案には「国防動員と戦争状態」を規定する第8章に「中国の主権、統一、領土保全、安全と発展の利益が脅かされたとき、国家は全国総動員あるいは一部動員を行う」という条文が盛り込まれた。
23日付の共産党機関紙・人民日報系の環球時報英語版は「米国が同盟国とともに軍事的手段も含めて中国の発展の封じ込めを探っている現状で、脅威に対抗する法的根拠を持つことは重要な意味がある」という見解を伝えた。「発展の利益」保護の明記については「世界で拡大する権益に軍の支援を確保するためだ」と指摘した。
草案はまた、「国家は宇宙、電磁、サイバー空間を含むその他の重大な安全に関わる領域の活動を守る」として、新たな安全保障分野で軍事力を強化していく方針を改めて表明。兵器の性能を高めるため「国家は全社会の有利な資源を十分に利用し、自主的技術の研究開発を加速する」と強調した。
このほか、「軍人は共産党に忠誠を尽くさないといけない」として、非党員も含め党に従うよう求めた。草案は現行法と同様に、中国軍が国ではなく党の指導を受けると定めている。