アメリカ・トランプ前政権が日米相互関税の新たな適用を日本時間の7日午後1時頃から開始しましたが、合意内容を巡り日米間で認識のズレが生じています。特に、日本からの巨額投資の解釈や、15%の関税率の適用方法について、日本政府は困惑を隠しきれない状況です。この相違は、今後の日米関係、特に日本経済に大きな影響を与える可能性があります。
トランプ氏「好きにできる」発言と81兆円投資の認識差
ワシントンを訪問中の赤沢亮正経済再生担当大臣は、日本時間の7日午前0時から90分間、ラトニック商務長官と会談しました。赤沢大臣は、日米間で合意した相互関税の内容を改めて確認し、自動車関税の引き下げとともに、速やかに実施するよう求めました。しかし、赤沢大臣がアメリカ到着前に、トランプ前大統領が5日に米テレビ番組(CNBC)で語った発言が波紋を広げていました。トランプ氏は、日米関税協議で合意された日本からアメリカへの5500億ドル、およそ81兆円の投資について、「我々が好きにできる資金で、野球選手が受け取る契約金みたいなものだ」と述べたのです。これに対し、日本政府は、この81兆円の投資が政府系金融機関による出資や融資、融資保証などを行う枠組みであり、実際に資金が投入される出資は全体の1%から2%に留まると説明しており、トランプ氏の認識とは大きな隔たりがあります。
日米間の経済閣僚級協議の様子
税率15%の解釈:一律適用か、既存税率への上乗せか?
関税率についても、日米間で認識のズレが見られます。日本政府は、既存の関税率が15%未満の品目については一律15%が適用され、牛肉など既存の関税率が15%以上の場合は相互関税が適用されないという特例で合意したと説明しています。しかし、5日にアメリカ側が公表した内容では、すべての品目に15%の関税が上乗せされるとも解釈できる文言が含まれていました。これに対し、赤沢大臣は「米側の閣僚から聞いている説明と違う内容になっている。経緯をきちっと説明してもらい、合意した内容を実現してもらうよう求める」と述べ、強い懸念を示しました。新たな相互関税が適用される日本時間の7日午後1時1分が目前に迫る中、牛肉の輸出を手掛ける日本の卸売業者からは、「明日付で輸出したものに何%の関税がかかるかは、課税されてみないと分からない状況だ」といった不安の声が上がっています。現在の牛肉の関税率が36.4%である上に、さらに15%が上乗せされる事態となれば、その影響は計り知れません。
日米相互関税における認識の相違を示す図
結論
日米貿易合意を巡る認識のズレは、トランプ前大統領の独特な発言とアメリカ側の公式文書の内容に起因しており、日本政府は合意の履行を強く求めています。特に、日本からの巨額投資の実態と、15%の関税が既存税率に上乗せされるのか、それとも特定の品目にのみ適用されるのかという問題は、日本の輸出企業に直接的な影響を与えるため、その動向が注視されます。今後の両国の具体的な対応が、日米間の経済関係にどのような影響を及ぼすか、引き続き注目が必要です。
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