酒気帯び運転、女性へ暴行…疑問を残した新潟と仙台の不祥事対応 信頼失墜で経営危機に拍車


 Jリーグで相次いだ不祥事で、クラブ側の対応に不可解さが目立っている。J2新潟は酒気帯び運転で警察の捜査を受けていた外国人選手を、J1仙台は女性に暴行した日本人選手をリーグ戦で起用。最終的に解雇したが、トラブルを把握しながら公表を控えて厳正に対処せず、サポーターやスポンサーの信頼を失ったことで自らを窮地に追い込む結果となってしまった。

 新潟のブラジル人FWファビオ(23)は9月17日未明、飲酒後に新潟市内で乗用車を運転していたところ、新潟県警の取り締まりを受けた。また、スペイン人FWペドロ・マンジー(32)も取り締まり直前まで同乗しており、両選手は10月16日、道交法違反(酒気帯び)などの疑いで書類送検された。一方、仙台のMF道渕諒平(26)は20日発売の週刊誌で、知人女性に対する暴力を含む数々のハラスメント行為が報じられた。

 酒気帯び運転や女性への暴力は決して許されない行為だ。クラブは練習や試合を離れた選手個々のプライベートまでコントロールできないし、する必要もないだろう。最大の非が問題行動を起こした選手にあるのは言うまでもないのだが、トラブルを把握した後のクラブの対応には首をかしげざるを得ない。

 新潟は9月17日に酒気帯び運転の事実を知った後も両選手を練習に参加させ、ファビオを23日から10月14日までのリーグ戦6試合に出場させている。Jリーグに報告したのは、第三者の情報提供を受けたJリーグから10月12日に問い合わせがあった後だった。書類送検を受け、同19日付でファビオ、マンジー両選手を解雇。新潟の是永大輔社長は公表を控えた理由に警察の捜査終結を待っていたことなどを挙げたが、公表やJリーグへの報告の遅れ、ファビオらの通常活動容認を判断ミスと認めて「猛省している」と陳謝した。

 Jリーグの村井満チェアマンは「飲酒運転は選手が認めている疑いのない事実。そういう状況では(活動に)自重を求めるべきで判断ミスだったと思う」と述べた。納得のいく指摘であり、是永社長が「隠蔽(いんぺい)の意識はなかった」と弁解しても説得力を欠く。

 J1のG大阪は、10月25日に同じく酒気帯び運転などの疑いで大阪府警の任意捜査を受けたFWアデミウソン(26)を同日中に謹慎処分とし、26日に公表した。ごく当たり前の対応だっただけに、新潟の緩慢さは際立つ。Jリーグは新潟に対してヒアリングを行い、不祥事案の報告義務を怠ったJリーグ規約に抵触すると判断した場合は処分を下す方針だ。

 仙台の対応も疑問だらけだ。道渕と女性とのトラブルについては、8月14日に女性の関係者から連絡を受けて把握した。道渕に事情を聴いた上で自宅に待機させたが、9月5日に示談成立の報告があったため、同8日からの練習復帰を認めて20日から10月18日までのリーグ戦7試合に出場させていた。公表は道渕、女性の双方が望まなかったことから控えてきたという。

 仙台は8月中にJリーグに報告し、示談成立でJリーグ、仙台ともに「問題は解決した」と判断したが、10月20日の週刊誌報道で事態は急変。暴行以外の数々のハラスメント行為も伝えられ、仙台は「認知していなかった事実などクラブの秩序、風紀を著しく乱す内容が含まれていた」などとして同日付で道渕を解雇した。

 相手のあるトラブルについて、道渕から話を聞くだけで全容を知るのは無理がある。道渕は甲府在籍時の2017年にも別の知人女性に対する暴行容疑で逮捕され、同年シーズンの公式戦出場停止などの処分を受けている。女性の関係者からも詳しく事情を聴いて事実関係を把握しきれなかったのをクラブの不手際と責めては酷だろうか。仙台の菊池秀逸社長は「ファン、サポーターや株主、スポンサー、Jリーグにご迷惑をかけたことを深くおわびします」と謝罪した。

 新潟と仙台にとっては自らを追い込む失態だ。新型コロナウイルスの感染拡大によって観客数を制限されている今季、両クラブは経営に苦しんでいる。是永社長は4月に倒産の可能性に言及し、後援会による募金活動には9月までに3千万円超が寄せられている。また、今年度決算で約3億円の債務超過が見込まれる仙台も9月下旬に募金活動を始めたが、道渕を解雇した翌日に中断を余儀なくされた。

 解雇された選手らの行為にいずれも弁解の余地はない。Jリーグやクラブに選手ら関係者個々の愚行まで防ぐのは不可能で、悔やまれるのは数々の疑問を抱かせる事後対応。村井チェアマンが「社会の希望になろうとやってきたが、期待を裏切る結果となった。繰り返さないようにしていく」と述べた通り、Jリーグとクラブは襟を正して信頼を取り戻していくしかない。(運動部 奥山次郎)



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