
【ワシントン時事】米大統領選で勝利が確実となったバイデン前副大統領の最優先課題は、新型コロナウイルス流行で悪化した経済の再建だ。
政権の大型財政策や増税策を指揮する財務長官には、危機対応の経験が豊富な連邦準備制度理事会(FRB)のラエル・ブレイナード理事(58)が初の女性トップとして最有力視されている。
バイデン氏は、新政権の顔触れは「米国を象徴する」と多様化を重視する意向を明言している。歴代財務長官に女性はいないため、ブレイナード氏が就任すれば政権のシンボルになりそうだ。
ブレイナード氏は2010~13年、民主党のオバマ前政権下で国際担当の財務次官として為替政策やリーマン・ショック後の対応に携わった。FRB理事には14年に就き、今回のコロナ流行を受けた企業への緊急融資策に奔走。二つの危機に対処した手腕を評価し、経済再建策の主導役として「これ以上の適任者は想像しにくい」(米メディア)との見方もある。
長官候補には、厳しい銀行規制強化や巨大IT企業の分割を主張する左派色の強いウォーレン上院議員も浮上している。だが大型財政出動や増税といった看板公約の実現には議会で共和党との調整力が問われるため、中道派とされるブレイナード氏がふさわしいとの観測がある。
ただ、銀行規制の緩和にはブレイナード氏も反対の立場。トランプ政権はリーマン危機後の銀行規制の緩和を進めたが、ブレイナード氏は「金融危機の教訓を学んでいない」とFRBの規制見直しに際してたびたび反対票を投じた。また、銀行に低所得者層の多い地域の発展を求める法律の強化を支持しており、バイデン政権が目指す経済格差の是正にも意欲的だ。