新型コロナウイルスのワクチン開発で「有効性が9割を超えた」とする、米製薬大手企業のファイザーやモデルナによる臨床試験(治験)の結果について、17日あった衆院厚生労働委員会で参考人の宮坂昌之・大阪大名誉教授(免疫学)が見解を示した。宮坂氏は「(発表された)初期データを見る限り、インフルエンザワクチンよりも効果が高い可能性は十分ある。ただ、問題は安全性だ」と指摘。現在の治験の規模では「副反応リスクがどのぐらいあるのか分からない」とし、過度な期待の高まりに警鐘を鳴らした。
ファイザーは9日、約4万4000人を対象としたワクチンの最終段階(第3相)の治験で、有効性が90%超だったと発表。モデルナも16日、3万人以上の第3相治験で有効性が94・5%に上ったとした。インフルエンザのワクチンの有効性が3~5割程度とされ、「90%超」に関係者の間では驚きが広がっている。
宮坂氏は「9割超」の意味について「『100人に接種して90人に効果があった』というものではない。ワクチンを打たなかった人で(新型コロナを)発病した人の9割は、ワクチンを接種していたら発病しなかっただろう、と言い換えられる」と説明。一方、一般的にワクチン接種による重篤な副反応は「100万回に数回程度」あり、これまでも多くのワクチンが安全面から開発途上で脱落してきたとして、「有効性がかなり高いのは間違いないが、安全性に関してはまったく担保されていない。極めて慎重に使わなければならない」とした。
また、参考人の岡部信彦川崎市健康安全研究所長は、開発で先行する海外製ワクチンでは、小児と妊婦は治験の対象になっていないとして、国内でも接種対象から外すべきだとの考えを示した。【横田愛、金秀蓮】