KF-21(韓国型次世代戦闘機)の開発事業が、UAE(アラブ首長国連邦)からの熱い視線を受け、新たな局面を迎えています。総額約1兆円という国家プロジェクトであるKF-21開発は、当初インドネシアとの共同開発として進められていましたが、インドネシア側の財政難による分担金滞納問題で暗礁に乗り上げていました。そんな中、UAEとの協力関係構築の可能性が浮上し、KF-21の未来に明るい兆しが見えてきたのです。
UAEとの協力関係強化:KF-21への関心は本物か?
4月16日、韓国空軍のイ・ヨンス参謀総長とUAE空軍・防空司令官のラシュド・モハメド・A・アル・シャムシ空軍大将が会談を行い、「KF-21包括協力に関する意向書(LOI)」を締結しました。この意向書には、UAE空軍によるKF-21の訓練への立ち会い、関連部隊訪問などが含まれています。
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UAEは過去にもインドネシアの分担金滞納時にKF-21への参加意向を示しており、韓国の防衛産業にとって重要な顧客でもあります。2022年には韓国製の中距離地対空迎撃ミサイル「天弓2」を約4兆6500億ウォンで購入するなど、両国の防衛協力は着実に進展しています。
今回の訪韓中には、UAE空軍のアジャン・アリ・アルヌアイミ空軍戦闘センター司令官(准将)がKF-21試作機に試乗し、試験飛行も実施。UAE代表団は韓国防衛事業庁や韓国航空宇宙産業(KAI)の幹部とも会談し、防衛協力の強化策について議論を深めました。航空軍事アナリストの田中一郎氏は、「UAEのKF-21への関心の高さは、韓国の航空技術に対する信頼の証と言えるでしょう」と分析しています。
インドネシアとの共同開発:難航する交渉の行方
UAEとの連携強化を進める一方で、韓国政府はインドネシアとの協力関係も維持していく方針です。防衛事業庁の関係者によると、KF-21に関する両国実務陣の協議は継続されているとのこと。
インドネシアは当初、約1兆6000億ウォンの分担金を支払う代わりに、試作機1機と48機の現地生産、技術移転を要求していました。しかし、その後分担金の支払いを中断し、最終的には約6000億ウォンのみの支払いを表明。さらに、パーム油など現物での支払い、あるいは納付期限の延長を要求するなど、交渉は難航しています。
KF-21開発への影響:食い逃げ批判と今後の課題
インドネシア側の技術者によるKF-21関連資料の不正持ち出し事件も発生し、両国の関係はさらに悪化。最近では、インドネシアがトルコの第5世代戦闘機「TF-X KAAN」プロジェクトへの関心を示したとの報道もあり、「食い逃げ」との批判も高まっています。
防衛業界関係者は、「韓国政府はインドネシア市場を重視しつつも、KF-21の開発遅延を防ぐため、より強硬な姿勢で交渉に臨む必要がある」と指摘しています。追加負担なしでの技術移転は認めず、当初の合意内容を遵守させることが重要となるでしょう。
KF-21の未来:国際協力と今後の展望
KF-21は韓国の航空技術の結晶であり、UAEとの協力は新たな可能性を切り開く重要な一歩となります。一方で、インドネシアとの問題解決も急務であり、今後の交渉の行方が注目されます。KF-21が真に国際的な戦闘機として羽ばたくためには、関係各国との協力関係を強化し、開発をスムーズに進めていくことが不可欠です。