これが彼の話していた一度も経験したことのない国かと鬱憤を吐き出す人は少なくない。こうするためにろうそくを手に掲げたのかと自分の恥ずかしさに苦しむ人も多い。現政権と前政権を細かく比較し、むしろ朴槿恵(パク・クネ)政権がましだったと謝る文がソウル大学のオンライン掲示板に投稿された。法務部の秋美愛(チュ・ミエ)長官が尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長にしたように、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の職務を停止し懲戒を請求すれば秋長官を支持するという風刺を込めた壁新聞が大学街に張り出された。この政権がうまくやっていると考える人たちももちろんいるが、世論調査の結果を見ればそう考えない人がもっと多い。
苦労して作った陶磁器を地面に叩きつけるように、民主化運動圏政権がむしろ民主主義を叩き壊す逆説的状況だ。法治の守護者になるべき法務部長官は法で任期が保障された検事総長を引きずり下ろすことができずやきもきする。なりふり構わずあらゆる方法を動員する過程で規定と手続きを無視し、関連法まで違反した状況が次から次へと明らかになっている。猟犬として利用していたのはいつのことだったか、いまになって愛玩犬役をしないからと刀を突き付けている。
4月の総選挙で大韓民国の主権者は過半数をはるかに超える180近い議席を民主党に集めた。圧倒的議席を武器に政府与党である民主党は暴走を日常的に行っている。政府与党の実力者だという人々が吐き出す荒々しい言葉から、国民に対する礼儀と相手側に対する配慮は見つからない。誤りを指摘し問題を提起すればむしろ語気を荒らげ目を剥いてすごむ。独善と傲慢は天を突く勢いだ。
「まさかこうなるとは思わなかった」とか「他の選択肢がなかった」とか言いながら弁解をしてみてもどれも意味のないことだ。こぼれた水だ。権限を持ったら責任も負うことが主人になった道理だ。誤った選択の代価を払っていると考え、再び愚かな選択をしないと誓う方がむしろ気が楽だ。
自分たちの手で選択した政権に対する期待がいつも裏切られたため、進歩であれ保守であれ政治をする奴らはみんな同じだという言葉が出てこないわけがない。民主主義そのものに対する根本的懐疑も提起される。「民主主義はこれまで試みられた他のあらゆる政治形態を除けば最悪の政治体制」というチャーチルの言葉もあるが、民主主義はもともと不完全な制度だ。慎重に扱わなければ人を傷つける鋭い刀になりかねない。