仮想通貨を正式な通貨と認定できないという韓国政府の言葉にも仮想通貨が決済と寄付など日常全般に拡散している。写真はある仮想通貨でコンビニで決済する様子。[写真 ダナルフィンテック]
韓国社会の「厄介な問題」に浮上した仮想通貨が日常に食い込んでいる。コーヒーを注文したり映画館で映画を見たりする際に現金の代わりに仮想通貨で決済できる。恵まれない人に寄付をする時にも使われる。仮想通貨を「貨幣や金融資産ではない仮想資産」に限定し、制度下に引き入れることはできないという韓国政府の確固とし意志を色あせさせる。
領域を広めていく仮想通貨が最近足を踏み入れたのはチャリティだ。仮想通貨取引所GDACを運営するピアテックが先月1億ウォン相当のビットコインを社会福祉共同募金会に寄付した。法定寄付金団体に仮想通貨を寄付したのは今回が初めてだ。社会福祉共同募金会関係者は「GDAC取引所に法人会員として加入し(仮想通貨で)寄付を受けられる口座を開いた」とした。寄付の原則も立てた。仮想通貨の価格変動性を考慮し最大限早く売って恵まれない人の支援に使うことにした。
仮想通貨は地方税の長期滞納問題を解く妙策としても使われる。ソウル市は仮想通貨取引所4カ所で先月25日基準地方税滞納者963人の仮想通貨402億ウォン相当を差し押さえた。ソウル市38税金徴収課関係者は「滞納者が仮想通貨で財産を隠すという情報から調べ始めた」とした。効果はすぐに現れた。「仮想通貨さえ返してくれればすぐに税金を納付する」という滞納者の要請が殺到した。差し押さえ対象のうち118人は滞納していた税金約12億ウォンを自主的に納付した。光州市(クァンジュシ)と慶尚南道巨済市(キョンサンナムド・コジェシ)など全国の自治体が滞納者の仮想通貨確認に乗り出した。
税金徴収手段だけでない。仮想通貨そのものも課税対象に含まれる。韓国政府は来年から仮想通貨で稼いだ利益が年間250万ウォンを超えれば税金(その他所得税20%)を課す。もし子女に譲れば相続税・贈与税を納付しなければならない。会社員のチェさん(52)はビットコイン1.5個を最近息子に譲渡しようとしたが贈与税負担から断念した。決済市場でも仮想通貨の影響力は大きくなっている。電子決済代行会社ダナルの子会社ダナルフィンテックが発行したペイコインが代表的だ。2019年5月に上場したペイコインはコーヒーチェーンのタルコムコーヒーで現金のように使われた。2年が過ぎたいま、カフェだけでなくコンビニエンスストアと書店、映画館、ピザ店など7万店を超えるオンライン・オフライン加盟店でペイコインを使うことができる。ダナルフィンテックのチョン・ソンヨプ 理事は「最近ではペイコインで決済する無人機器(キオスク)を韓国で初めて導入した」と話した。
◇イーベイも「仮想通貨決済」導入検討…「価格変動性大きく拡散難しい」
グローバル企業も先を争って仮想通貨決済サービスを導入している。世界的電子商取引企業のイーベイは仮想通貨を新たな決済手段として検討している。ペイパルは3月に仮想通貨オンライン決済サービスを導入した。ペイパルは「ペイパルのデジタルウォレットにビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコインを保有する顧客はこれを法定通貨に転換して使うことができる」とした。
美術品競売でも仮想通貨決済が可能になった。世界的な競売会社サザビーズは4日、競売落札代金をビットコインやイーサリアムなど仮想通貨で支払えるようにすると明らかにした。12日に行われる英国の路上芸術家バンクシーの作品「Love is in The Air」の競売からだ。決済は仮想通貨取引所であるコインベースと提携を結んで進める計画だ。サザビーズはこれに先立ちNFT(非代替性トークン)作品を競売対象に含めている。
このように仮想通貨が日常の多様な領域に食い込んでおり、制度下に引き込んで規制すべきという声が重さを増している。「共に民主党」のイ・ヨンウ議員は近く「仮想資産業法制定案」(仮称)を発議する予定だ。法案には新規仮想通貨上場時に発行規模と危険性を詳しく書いた「白書」を公開し、仮想資産預置金を金融機関に別途保管して投資家を保護する内容が盛り込まれる。
もちろん制度編入に反対する意見も少なくない。延世(ヨンセ)大学経済学部のソン・テユン教授は「仮想通貨は価格変動性が過度で安定的な通貨の機能を任せるのは難しい」と強調した。漢城(ハンソン)大学経済学科のキム・サンボン教授も「現在の仮想通貨は技術や内在価値がなく有名人の一言で価値が上下する。むしろ投機性資産に近く注意が必要だ」と警告した。