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天皇、皇后両陛下と皇族方が出席されて行われた「歌会始の儀」=皇居・宮殿「松の間」で2022年1月18日午前10時36分(代表撮影)
天皇、皇后両陛下は18日、皇居・宮殿「松の間」であった新春恒例の「歌会始の儀」に臨まれた。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大で約2カ月延期されており、2年ぶりに1月の実施となった。両陛下や皇族方の歌と共に一般の入選者らの作品が伝統的な節回しで披露された。両陛下の長女愛子さまも成年皇族として初めて歌を寄せたが、学業のため儀式は欠席した。
【写真で見る】皇居で成年行事に臨まれる愛子さま
儀式には両陛下のほか秋篠宮さまら皇族方6人が出席した。感染防止対策として招待者は大幅に絞られ、読み上げ役はフェースシールドを着用。宮内庁は読み上げ役のほか、入選者らにも事前にPCR検査などを受けるよう協力を求めた。
今年の題は「窓」。天皇陛下は、コロナ収束の先に日本と世界の人々の往来が再び盛んになる日が訪れることを願う気持ちを詠んだ。皇后雅子さまは昨年9月に転居した皇居・御所から眺める大きな木々と、ここで長く暮らした上皇ご夫妻への感謝を歌にした。愛子さまは学習院女子高等科2年の夏に英国でサマースクールに参加した際の心弾む気持ちを振り返った。
10人の入選者のうち9人が儀式に参加し、その後、両陛下と面会した。最年長の西村忠さん(85)=富山県南砺市=は記者会見で「大変光栄。私の詠んだ歌が県民の皆さんにも喜んでいただけるなら大変うれしい」と喜んだ。亡くなった夫を歌にした三浦宗美さん(68)=東京都新宿区=は面会時に陛下から「おつらかったですね」と声をかけられたといい、両陛下について「とても穏やかで温かい、包み込むようなお人柄だと感じた」と話した。【井川加菜美】
◇天皇陛下
世界との往き来難(がた)かる世はつづき窓開く日を偏(ひとへ)に願ふ
◇皇后雅子さま
新しき住まひとなれる吹上の窓から望む大樹のみどり
◇秋篠宮さま
窓越しに子ら駆け回る姿を見心和みてくるを確かむ
◇天皇、皇后両陛下の長女愛子さま
英国の学び舎に立つ時迎へ開かれそむる世界への窓
◇秋篠宮家の次女佳子さま
窓開くれば金木犀の風が入り甘き香りに心がはづむ
◇常陸宮妃華子さま
幼子は新幹線の窓に立ち振りむきもせず川ながめゐる
◇寛仁親王妃信子さま
成人を姫宮むかへ通学にかよふ車窓の姿まぶしむ
◇三笠宮家の彬子さま
蛍光灯映る窓辺に思ひだす大正帝の螢雪の苦を
◇高円宮妃久子さま
車窓より眺むる能登の広き海よせくる波は雪降らしめつ
◇高円宮家の長女承子さま
コロナ禍に換気もとめて閉ぢぬ窓エアコン眺めてしばし案ずる
◇入選者(年齢順)
富山県 西村忠さん(85)
剱岳三ノ窓より朝日さし富山平野に田植はじまる
福岡県 高木典子さん(84)
海を見るうしろ姿の絵のありて時をり共にその窓に立つ
福岡県 田久保節子さん(81)
柿わかばきらめくまひる窓あけて天道虫を風に乗せやる
香川県 藤井哲夫さん(78)
出来た子もそれなりの子も働いて働きぬいて今日同窓会
東京都 三浦宗美さん(68)
夫逝きて十年(ととせ)を過ぎし今もまだ窓のそとには灰皿のある
青森県 高橋圭子さん(60)
斜陽館に少しゆがんだ窓ガラス津島修治も見てゐたはずの
東京都 川坂浩代さん(55)
パソコンの小さき窓にそれぞれの日常ありて会は始まる
茨城県 芳山三喜雄さん(49)
ベランダに鯉幟ゆれる窓を指し君は津波の高さ教へる
東京都 伊藤奈々さん(41)
窓を拭く人現れてこの場所がほぼ空だつたことに気が付く
新潟県 難波來士さん(16)
窓の外見たつて答へはわからない少し心が自由になれる
◇召人
菅野昭正さん
きはやかに窓に映えたる夕虹は明日の命の先触れならむ
◇選者
篠弘さん
一本のザイルたぐりて窓を拭く岩場をこなす若者の腕
三枝昂之さん
夕映えの町が暮らしの町となり窓にひと日の灯が点りゆく
永田和宏さん
閉ざすとき窓に光の残りゐて呼べど応へぬ人ありわれに
今野寿美さん
廃校の窓の下にもこの春の花あり土地の人が植ゑにき
内藤明さん
まづ窓の位置を決めたり夏の夜に父と作りし模型の小部屋