3歳児放置し死なせた母親の裁判「こんなママでごめんね」 それでも「断れなかった」理由


〈弁護人〉
「のんちゃん(稀華ちゃん)を産んで初めて見たときの気持ちは?」
〈梯被告〉
「ちっちゃくてかわいいと思いました」
「幸せにしてあげたい。のんちゃんにはウチしかいないからがんばろう。ウチみたいな人生は歩んでほしくないから、ウチが死ぬまでがんばろう。心から笑ってほしいと思いました」

法廷で、亡くなった稀華(のあ)ちゃん(当時3歳)を出産した時を振り返った梯沙希被告(26)。「自分のような人生を歩んでほしくない」という言葉の意味は何なのでしょうか。裁判では梯被告の生い立ちの一端が明らかになりました。まずは法廷で読み上げられた母親の供述調書です。

■母親からごみ袋に入れられ放置された■

〈母親の調書〉
「沙希は私が高校生のころできた。1人で産んでどうしようという孤独感があった」

母親は梯被告を産んで一度、児童施設に預け、小学生になるころに引き取って一緒に暮らします。しかし・・・

〈母親の調書〉
「急に育児をすることになり、とまどいがあった。言うことを聞かない沙希に感情的になり腹を立てた」

すぐに幼い梯被告に手をあげるようになります。梯被告が小学校2年生の夏休み、家にいるようになると虐待はエスカレートしたといいます。

〈母親の調書〉
「正座をさせて後ろ手でガムテープでしばり放置した。おしっこをされるのが嫌でビニール袋に入れた」
「ビニール袋に入れて数日お風呂場に入れた。沙希は1人で歩けないほどになっていた」

■「何も言わずに笑っていればいい」■

梯被告は法廷で母親からの虐待について涙ながらに、証言しました。

〈梯沙希被告〉
「母親から『お前は何もいわずに笑っていればいい』と言われました。最初は『嫌だ』と言ったけれど、余計に暴力を振るわれるから顔色を伺うようになった」

法廷では、その後の梯被告の生い立ちについて審理が続きましたが、人間関係をめぐるトラブルの中で、梯被告はたびたび「嫌だといえなかった」と振り返りました。アルバイト先で知り合った男性と交際後、避妊を言い出せませんでした。

〈梯被告〉
「できたらどうしようという不安はめちゃくちゃありました」
〈弁護人〉
「どうして相手につたえなかった」
〈梯被告〉
「言いたくても言えないんです。喉が締め付けられた感じになって」

男性とは稀華ちゃんが生まれた2016年に結婚しますが、翌年離婚します。その後も何度か男性は梯被告と稀華ちゃん母子と面会しましたが、稀華ちゃんは梯被告によくなつき、特に異変はみられなかったといいます。

■誘われて「断れず」鹿児島に・・・■

離婚後、東京に出て母子2人で暮らしていた梯被告。初めて稀華ちゃんを家において外出したのは、2歳になる前。寝ている稀華ちゃんを家において、友人と遊びに出かけたといいます。

〈梯被告〉
「友達に誘われたというのもあるけど、息抜きをしたいという思いもあった。心配ですぐ帰りたくて。けどやっぱり友達に言えなくて」

おととし、最初の緊急事態宣言が出されると飲食店のアルバイトは厳しくなり、生活が厳しくなりました。このとき稀華ちゃんをおいて外出する頻度が増えたといいます。

〈梯被告〉
「どうにか、お金を増やそうと、教えてもらったスロットにいったり、(知人からの)誘いを断れず、そのまま行くこともありました」
〈弁護人〉
「役所に相談したことは?」
〈梯被告〉
「ないです。役所は住所の手続きとか、そういうところだと思っていました」
〈弁護人〉
「生活保護受けるというのは考えなかった?」
〈梯被告〉
「その生活保護というのも知らないです」

このとき、稀華ちゃんの存在を知らせず交際していた男性がコロナ禍で鹿児島へ帰郷します。梯被告は男性の知人に誘われ、一緒に2度、鹿児島旅行に行きました。1度目はおととし5月のことです。

〈梯被告〉
「行きたくなかったけど断れないし(略)電話で言われて断れずに」

出かける際には食べ物と飲み物を部屋に残して鍵を閉めました。滞在中は稀華ちゃんのことを思うと「全然楽しくなかった」といいます。3日後、帰宅した梯被告。稀華ちゃんは寝ていました。

〈弁護人〉
「その時どう思った」
〈梯被告〉
「こんなママでごめんねって、ずっと謝っていました。自分が憎くてたまらなかったです」

しかし、翌月(おととし6月)も知人に誘われ鹿児島に行きます。この時も自分から帰りたいとは言い出せず、知人が帰ることを決めたときには8日間が経っていました。

〈弁護人〉
「空港からの帰り道、何を買いましたか」
〈梯被告〉
「のんちゃんと食べようと思って、ハンバーグを買いました」

6月13日午後3時すぎ。帰宅すると、眠ったようだったという稀華ちゃん。この日か、その前日に亡くなっていました。死因は高度脱水と飢餓でした。梯被告の裁判は来週も続き、虐待心理の専門家などが証言する予定です。(29日01:34)



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