渡辺容疑者が立てこもった自宅(中央)(28日午前9時1分、埼玉県ふじみ野市で、読売ヘリから)=富永健太郎撮影
埼玉県ふじみ野市の民家で起きた発砲・立てこもり事件で、殺人容疑で送検された渡辺宏容疑者(66)が、自宅に呼び出した医師の鈴木純一さん(44)らに対し、少なくとも散弾銃を3発発砲していたことが、捜査関係者への取材でわかった。渡辺容疑者は、最初に鈴木さんに向けて発砲したと供述している。
【写真】送検のため東入間署を出る渡辺宏容疑者(左)(29日午前、埼玉県ふじみ野市で)=時事
県警の調べに対し、渡辺容疑者は、鈴木さんを撃った後、理学療法士の男性(41)=上半身を撃たれ重傷=に発砲し、医療相談員の男性(32)の顔に催涙スプレーを噴射、さらに別の医療相談員に向けても撃ったと供述しているという。
捜査関係者によると、渡辺容疑者は、26日に死亡した母親(92)の診療を担った鈴木さんら医療関係者に対し、「線香をあげに来てほしい」などと求め、鈴木さんら7人が27日午後9時頃に渡辺容疑者宅を訪れた。
1階和室のベッドには母親の遺体が置かれており、渡辺容疑者は「生き返るかもしれないので、心臓マッサージをしてほしい」と蘇生措置を要求。これに対し、鈴木さんが母親の死亡確認をしてから約30時間がたっていたことなどを説明したところ、渡辺容疑者は銃を取り出して鈴木さんに発砲。鈴木さんは胸部に銃弾を受け、即死状態だった。
県警が28日午前8時頃、玄関の鍵を壊して突入した際、渡辺容疑者は、母親の遺体が置かれていたベッドと窓の間にうずくまり、鈴木さんは床にあおむけに倒れていた。母親のベッドには散弾銃があったという。
渡辺容疑者は「母が死んでしまい、この先、いいことがないと思った。自殺しようと思ったときに先生やクリニックの人を殺そうと思った」とも供述している。県警は2丁の散弾銃を押収しており、あらかじめこれらを準備して鈴木さんらを自殺に巻き込む計画だったとみて調べている。
押収された散弾銃について、渡辺容疑者は2000年と08年に県公安委員会から所持が認められ、20年には許可の更新手続きを行っていた。