JA職員の苦悩:ノルマに追われ、知識不足に悩む現実とは?【農協の闇】

JA(農業協同組合)は、組合員である農家の生活を支える組織として設立されました。しかし、近年、JAにおける「不正販売」や「自爆営業」といった問題が表面化し、その実態に注目が集まっています。今回は、元日本農業新聞記者による徹底取材に基づき、JA職員が抱える苦悩、特に知識不足と過大なノルマの実態について深く掘り下げていきます。

知識不足に悩むライフアドバイザー(LA)

JA共済の販売を担うライフアドバイザー(LA)。彼らが直面する大きな課題の一つが知識不足です。LAになるにはJA共済連が実施する試験に合格する必要がありますが、その後のフォローアップ研修は地域によって内容や頻度に大きな差があるのが現状です。

トレーナーによる研修の格差

JAでは、地域の指導的立場にある「トレーナー」がLA研修を実施しています。研修内容はJA共済の動向や最新商品、保険業界に関する幅広い知識を網羅するものですが、受講はLA本人の自主性に委ねられています。さらに、研修の頻度はトレーナーによって異なり、毎月開催される場合もあれば、年に1~2回という場合もあるなど、統一性がありません。

alt="JA職員の研修風景"alt="JA職員の研修風景"

静岡県浜松市の「JAとぴあ浜松」のLAは、「保険会社と比べて、業界や商品の知識を得る研修は圧倒的に少ない」と証言しています。多くのLAは「浅く広い知識」しか持っておらず、顧客のニーズに的確に応えることが難しいと感じているようです。

独学で知識を補う努力

知識不足を補うため、自主的に勉強するLAもいます。休日に他社の保険会社の窓口を訪れ、顧客のふりをしてパンフレットを見たり、窓口で相談したりすることで、最新の商品情報を収集する努力をしているのです。保険業界の多様化・専門化が進む中で、顧客の要望に応えるためには、業界の動向を常に把握しておく必要があるという危機感を持っているからです。しかし、このような努力をしているLAは少数派であるのが現状です。

過大なノルマとプレッシャー

JA職員は、共済や金融商品の販売ノルマに追われています。達成できない場合、上司からの叱責や左遷といった厳しいペナルティが課されることもあり、精神的な負担は大きなものとなっています。

自爆営業の実態

ノルマ達成のために、職員が自ら商品を購入する「自爆営業」も横行しています。これは、顧客のためではなく、自身の評価を守るための行為であり、JAの理念から逸脱した行為と言えるでしょう。

組合員軽視の風潮

本来、JAは組合員である農家の利益を守るために存在する組織です。しかし、過大なノルマに追われるあまり、組合員のニーズを軽視し、不適切な商品販売を行うケースも少なくありません。

まとめ:JA改革への道

JAは、組合員のための組織として、その原点に立ち返る必要があります。職員の知識向上のための研修制度の充実、ノルマの見直し、コンプライアンス意識の強化など、抜本的な改革が求められています。農業の未来を守るためにも、JAの健全な発展が不可欠です。

この記事で紹介した内容は、書籍『農協の闇』に基づいています。より詳細な情報を知りたい方は、ぜひ本書をお手に取ってみてください。