
ロシア・オリンピック委員会 カミラ・ワリエワ選手 (写真:長田洋平/アフロスポーツ)
フィギュアスケート女子にROC(ロシア・オリンピック委員会)の選手として出場しているカミラ・ワリエワ選手15歳が、ドーピング検査で陽性反応になったことが明らかとなった問題、2月14日午後、スポーツ仲裁裁判所で「個人戦出場可能」という裁定が下りました。この問題についてスポーツジャーナリストの二宮清純(にのみや・せいじゅん)さんが解説します。
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ワリエワ選手“ドーピング問題”の経緯

ワリエワ選手“ドーピング問題”の経緯 (写真:長田洋平/アフロスポーツ)
圧倒的な強さでライバルの心を折ることからついた異名は“絶望”。2月7日に行われた北京五輪フィギュア団体でもその強さを見せつけ、ROCの金メダル獲得に大きく貢献したカミラ・ワリエワ選手。しかし、この団体戦の翌日に衝撃的なニュースが飛び込んできました。2021年12月25日に行われたロシア選手権大会で、ワリエワ選手がロシアの反ドーピング機関に提出した検体から「トリメタジジン」と言われる禁止薬物が検出されたことが明らかになったのです。
この結果を受け、ロシアの反ドーピング機関は2月8日、ワリエワ選手の選手資格を暫定的に停止。しかし2月9日、ワリエワ選手側から“異議”が申し立てられたことで一転、処分が解除され、オリンピックの出場が認められることになりました。すると、この決定を不服としたIOC(国際オリンピック委員会)などが、スポーツ仲裁裁判所に提訴しました。

検査結果判明まで、なぜここまで時間がかかった? (写真:長田洋平/アフロスポーツ)
ロシアの反ドーピング機関によると、コロナの感染拡大により検体を検査するスウェーデンの研究所のスタッフが自主隔離になったため約1か月半、検査判明までに時間がかかったということです。
一連の報道についてROCは「陽性となった検体はオリンピック期間のものではないことから、オリンピックでのワリエワ選手の実績とチーム競技の結果は見直しの対象にならない」とし、さらにROCの会長は「検体を採取してから陽性と判明するまでの期間が長すぎる」と、疑問を呈しました。

スポーツジャーナリスト 二宮清純さん
Q. 一体なぜ、約1か月半も前に採取された検体の結果がこのタイミングで明らかなったのでしょうか、この問題の背景には何があるのでしょうか?
(スポーツジャーナリスト 二宮清純さん)
「私は、やはり何か大きな政治的な背景がある気がします。ロシアは国家ぐるみでドーピングをしていたことで2018年平昌五輪から制裁処分中です。ところが習近平国家主席が今回はいわゆる特例として自ら、ロシアのプーチン大統領をメインゲストとして開会式に呼びました。この結果を開幕の2月4日までに出すと、『なぜプーチン大統領が開会式に出ているのか?』というふうになりかねないから、あえて検査の決定を遅らせたのではないかという疑念を持ちますね。」
Q. ワリエワ選手はROCの中では最も注目されている選手で、習近平国家主席が肝入りで呼んだプーチン大統領が来る意味がなくなるから、ということですか?
(二宮清純さん)
「ドーピングのことに関して、本当にプーチン大統領がメインゲストでふさわしいのかということを蒸し返される可能性がありますよね。それを避けたかったのではないかなという疑念を持っています。それと、ロシアのアンチドーピング機関はRUSADAという組織なんですけど、このRUSADAという組織は、最近は改善されたとはいわれていますけれども、ロシアがソチオリンピックの後、ドーピングに関して隠ぺい工作をしたときに、実はWADA(世界ドーピング防止機構)から資格停止を受けているんです。そして今回、ワリエワ選手異議申し立てをしたら『はい、分かりました』と、出場を認めているわけです。ワリエワ選手の異議に正当性がなかったとは言い切れませんが、私はそれ以上に、やっぱり何か大きな力が働いたとしか考えられないですね。」