(写真:読売新聞)
政府は年末に予定する「国家安全保障戦略」の改定で、ロシアのウクライナ侵攻を受けて対露戦略を見直す方針を固めた。現行の戦略が「パートナー」としているロシアの位置づけについて、北朝鮮や中国と同じ「国家安全保障上の課題」へと変更する方向で調整している。
首相官邸
安保戦略は国の外交・安全保障政策の基本指針となる文書で、2013年12月に策定された。10年程度の期間を念頭においた内容で、今回が初の改定となる。今後、政府はロシアとの向き合い方を抜本的に練り直す考えだ。
現行の戦略は、ロシアは国際社会の安定に向けての「パートナーとの外交・安保協力の強化」の項目に記載している。具体的には、安保・エネルギーを含めた「あらゆる分野で協力を進め、日露関係を全体として高めていくことは、我が国の安全保障を確保する上で極めて重要」としている。
だが、政府は、ロシアがウクライナを侵略して市街地を攻撃するなど、国際法上の違法行為を重ねている現実を踏まえ、ともに地域の安定を図るパートナーと位置づけることはできなくなったと判断した。防衛省幹部は「現行の戦略ではロシアは友好国扱いだが、もはや甘い対応はとれない」としている。
安保戦略を策定した13年は、安倍内閣の下で政府はロシアと初の外務・防衛閣僚協議(2プラス2)を行うなど、中国の台頭をにらんで関係強化を進めていた。安保戦略に基づき、極東開発やエネルギー分野での協力も進めてきた。
一方、現行の安保戦略で中国と北朝鮮はいずれも「安全保障上の課題」としつつ、策定当時から核・ミサイル開発を進める北朝鮮は「脅威」と表現している。中国は近年、空母の太平洋進出など軍事的圧力を強めており、政府は中国も「脅威」と明記することを検討している。