ハリーポッターの本で反戦訴えた女性が話題(写真:ロイター/アフロ)
広場でハリー・ポッターの本を読んでいたら、ロシア警察に拘束された――。米公共メディア「NPR」の取材にこう説明したのは、ウクライナ侵攻初日の2022年2月24日、モスクワで反戦デモに参加したロシア人女性だ。
【写真】青と黄色の本を重ねて読む女性
女性が持参したのは青と黄色の本。2冊重ねるとウクライナ国旗に見える。
■「1時間くらい、警察は私をどうしたらいいかわからなかった」
NPRは現地時間3月4日、モスクワでウクライナ侵攻への反戦デモに参加したユリア・ジブツォワさんへのインタビュー記事を公開。その内容から、日本のツイッターユーザーの間でも注目を集めている。
モスクワ近郊に住むジブツォワさんは2月24日、ロシアがウクライナに侵攻したというニュースを受け、「何かしなければと思い、できるだけ早くプーシキン広場(編注:モスクワ中心部の広場)に向かいました」(以下、編集部訳)と振り返る。
広場に着いても、ジブツォワさんは反戦のポスターなどは掲げなかったという。「私はポスターなど何も持っていませんでした。普通、ポスターを持っていたら、たとえ白紙であってもすぐに逮捕されます」。
そこで取った行動は、ハリー・ポッターの本を2冊読むことだった。作中に登場する魔法学校・ホグワーツのクラスカラーをイメージした、黄色い「ハッフルパフ」の本と、青い「レイブンクロー」の本を用意。2冊重ねると、ウクライナ国旗の色に見える。
ジブツォワさんは「1時間くらい、警察は私をどうしたらいいかわからなかったんです。でも結局、警察署に連行されることになりました」と振り返る。その日の夕方に釈放されたものの「罰金のようなもの」を課せられ、聴聞を待っている状況だという。
本の内容についてジブツォワさんは「私はちょうど『闇の帝王の昇天』について読んでいました」と説明。ハリー・ポッターシリーズにおける闇の帝王と言えば、「名前を呼んではいけないあの人」として登場する闇の魔法使い「ヴォルデモート卿」だ。
ジブツォワさんは「ロシアとウクライナはとても近い国で、歴史的にもつながりがあります。お互いに戦争をしたいわけではありません。だから、それが当たり前の理由だと思います」とデモに参加した理由を説明。ロシア国内ではデモ参加者以上に、戦争に反対する声が多いとしつつ、「彼らは逮捕されたくないのです。逮捕されたくない、職を失いたくない」とデモに参加しない人々の心情を察した。