(写真:読売新聞)
最大震度6強を観測した福島県沖を震源とする地震は、2004年の新潟県中越地震での脱線に続き、鉄道史上2度目となる営業運転中の新幹線の脱線を引き起こした。JR東日本の新幹線は地震計が大きな揺れを感知すると、強制的に非常ブレーキがかかるが、今回はその仕組みでは脱線を防げず、JR東は備えの見直しを迫られそうだ。
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東北新幹線の「やまびこ223号」は全17両のうち13号車を除く16両が脱線。14両は全車輪がレールから外れていた。
17日夜、運輸安全委員会の調査官は現地調査後に報道陣の取材に応じ、列車が脱線したのは停止直前か停止後だったとの見方を示した。また今回は大きな地震が連続して起きたことを踏まえ、「1回目の揺れの時にブレーキで停止し、2回目の揺れで脱線した可能性はある」と述べた。
一方、JR東の市川東太郎副社長は17日、「脱線を完全に防ぐのはかなり難しい」と述べ、地震対策の難しさもにじませた。中越地震後に導入された「逸脱防止ガイド」「転倒防止装置」の対策も、脱線を防ぐのではなく、その後、車体が側壁などにぶつかって、中の乗客らの人的被害が拡大するのを防ぐのが目的だ。
ガイドは車両に取り付け、脱線してもこれがレールに引っかかることで、線路から車体が大きく逸脱するのを防ぐ。転倒防止装置はガイドとの接触による衝撃でレールがずれないよう固定する。
今回は人的被害がなく、JR東の内部では「(二重に安全を確保する)『フェイルセーフ』の役目を果たした」との見方があるが、状況次第で被害が生じた可能性は否定できない。市川副社長は「不足していたところがあれば対応しないといけない」とし、安全委の調査を踏まえて対応を検討する考えを示した。
設備の耐震化の遅れも課題として浮かんだ。震度6強を観測した昨年の福島県沖の地震で全線復旧に11日間を要したのは、電柱や送電用の架線の損傷が原因だった。今回も、同様の理由で、全線復旧にそれ以上かかる見通しだ。
JR東は11年の東日本大震災を教訓に耐震化を進めてきた。しかし約2万本ある東北・上越新幹線のコンクリート製電柱のうち耐震化を終えたのは20年度時点で約1割。昨年の地震を受けて耐震計画を改定したが、まだ全電柱の耐震化の完了時期のめども示していない。富山大の金山洋一教授(交通政策)は「備えが機能した面もあるが、JR東は今後の災害に備え、改めて対策を検証する必要がある」と指摘する。