韓国大統領選、若年女性票が勝敗分ける ジェンダー格差背景に性別投票差鮮明

[ソウル 4日 ロイター] – 韓国の大統領選挙において、革新系政党「共に民主党」の李在明氏が勝利を収めた背景には、若年層の女性票が大きく影響した。一方で、同年代の男性は保守系候補に投票しており、性別による投票行動の差が鮮明になったことが明らかになった。この傾向の背景には、韓国社会における根深い男女格差の問題がある。

韓国放送局3社の合同出口調査の結果によると、20代の女性の約58%、30代の女性の57%が李在明氏に投票したことが示された。これとは対照的に、20代および30代の男性の過半数は、保守系政党である「国民の力」の候補と「改革新党」の候補に投票した。

背景にある男女格差と若い男性の不満

韓国では、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最大の賃金格差が存在するなど、男女間の格差が依然として深刻な社会問題となっている。女性の収入は男性の約3分の2にとどまっている状況だ。

男女格差の是正を求める声がある一方で、兵役義務が男性にのみ課されていることなどから、若い男性の間では「逆差別ではないか」といった不満の声も上がっている。一部の専門家は、こうした男性の意見が政治的な投票行動に影響を与えていると指摘する。

前政権のジェンダー政策と若い女性の反応

尹錫悦前大統領は、2022年の前回大統領選挙において、女性の活躍やジェンダー平等の推進を担う「女性家族省」の廃止を公約に掲げ、多くの男性票を獲得した経緯がある。

若い女性層は、尹前大統領による非常戒厳の発動を厳しく非難した。尹氏の罷免を求める大規模な抗議活動でも、若年層の参加者は女性の方が多数を占めた。

韓国女性団体連合は、今回の選挙結果を女性主導の「革命」と位置づけ、尹政権下で後退したジェンダー平等の進展を回復する出発点となるだろうと表明した。「これは単なる政権交代ではなく、尹政権が破壊した男女平等の民主主義を回復するための国民の激しい闘いによる歴史的成果である」と声明で述べた。

韓国大統領選の選挙活動中、ソウルで抗議活動を行う若い女性たち。ジェンダー平等を訴える姿韓国大統領選の選挙活動中、ソウルで抗議活動を行う若い女性たち。ジェンダー平等を訴える姿

新大統領のジェンダー政策への姿勢

新大統領となる李在明氏は、大統領就任演説の中で、女性家族省の役割を拡大していく方針を明らかにした。「若者は男女間で争うほど極端な競争に追い込まれた」と述べ、男女間に分断が生じた原因は機会の欠如と過酷な競争環境にあると非難した。

しかし、李氏がジェンダー平等を強く推進する姿勢を以前から一貫して示していたわけではない。共に民主党が初めて選挙公約を発表した際には、ジェンダー問題への対策が不十分であるとの批判も浴びていた。

今回の韓国大統領選挙では、主要な政策課題として男女格差が十分に議論されなかった点も指摘されている。また、18年ぶりに主要政党からの女性候補者がいなかったことも特徴的だった。

今回の選挙で明確になった性別・年代別の投票行動の差異は、韓国社会が抱えるジェンダーに関する複雑な課題と、それに対する世代間の異なる認識や不満を反映していると言える。


参照元:
Reuters
Yahoo News Japan (Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/6fea874a83a31d7980deaddd15fc11ac1d5d15ed)