地元漁師「もう少し捜索したかった」知床観光船不明 現場南風強く


地元漁師「もう少し捜索したかった」知床観光船不明 現場南風強く

知床岬の方角に捜索に向かう漁船=北海道斜里町で2022年4月24日午前6時6分、貝塚太一撮影

【写真】救助された人を搬送する様子も 現場は今

 「KAZU Ⅰ」の母港で知床半島にあるウトロ漁港(斜里町)は24日早朝、雲一つない快晴となった。午前5時半ごろ、網走海上保安署の職員が岸壁に集まった地元の漁業者らに、不明になっている乗客・乗員計26人の捜索への協力を要請。不明者を見つけた場合は、海保のヘリコプターか漁船で、ウトロ漁港まで搬送する手順を確認した。

 近くにある斜里漁協の柴田康一さん(52)は「『見つけるぞ』という気持ちで応援に来た」と力を込め、出口映治さん(59)は「23日は昼ごろに風向きが変わり、波の高さが3メートルほどになった。普通は漁、観光ともに船を出さない」と話しながら、船に乗り込んだ。

 午前6時ごろになると、不明者を発見・救助した海保などのヘリが漁港から約1キロ離れた斜里町立知床ウトロ学校(小中学校)の運動場に砂ぼこりを上げながら着陸。待ち構えた救急隊員らが救急車に運び込み、近くの病院などに搬送した。だが、救助された10人はいずれも死亡が確認された。

 ウトロ漁港の近くに住む女性(71)は23日午前、「KAZU Ⅰ」が出港するのを目撃したという。「人がかなり集まっていた。この辺りはツアーで来る人も多い。事故が起きた(観光名所「カシュニの滝」の)近くは、水温が2度くらいだと聞いているので心配。とても寒かったろうに」と不明者をおもんぱかった。

 一方、ウトロ漁港にある運航会社「知床遊覧船」の事務所は前日からカーテンが閉まり、ドアにカギがかかったまま。時折、関係者らしき人が何度か訪れたが、報道陣の問いかけに答えることはなかった。午後4時ごろ、国土交通省海事局と北海道運輸局の担当者計4人が事務所を訪れ、事故を受けた特別監査を開始した。

 日が傾き始めた午後4時ごろ、早朝にウトロ漁港を出た漁船が次々と戻ってきた。50代の男性は「午前6時から何隻もの船で、カシュニの滝から知床岬までを捜索した。別の船が陸に流れ着いた救命胴衣を見つけて、回収したようだ」と話した。ただ、南風が強くなり「途中で捜索を切り上げて翌日に捜すことになった。見つけられなくて残念だ。できることならもう少し捜したかった」と語った。

 地元の漁師たちは25日も海で捜索を続ける。午後5時まで漁船で海に出ていた加藤諒太さん(25)は「救命胴衣などを見つけたが、遭難した人は見つけられなかった。明日も午前5時ごろに出港する。ただ、天気が悪そうなので午前中が勝負かと思う。午後は自分たちの船では太刀打ちできないような波が来るかもしれない」と話した。【山田豊、最上和喜】



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